連載「多様性と企業」
人の多様性を軸にして、現状を打破して変わろうとする企業の最前線を伝える連載です。3回目では、女性の社外取締役への登用が企業の多様性につながるのかどうかに迫ります。
満開の桜に都心が色づいた3月24日、大手菓子メーカーの不二家は、定時株主総会を東京タワー近くのホテルで開いた。
創業111年の不二家に、これまでいなかった女性の取締役が2人誕生した。その1人、俳優の酒井美紀さん(43)はツイッターに「身に余る思い」と投稿した。
不二家の山田憲典会長(85)が女性の起用を考えたのは、数年前の株主総会で浴びせられた株主の一言がきっかけだったという。「女性がお客さんなのに、高齢の男性取締役ばかりで再生できるのか」
不二家は14年前、洋菓子に期限切れの原材料を使用した問題で危機に陥った。経営支援した山崎製パンで副社長まで務めた山田会長は「自分は古いタイプの経営者」と話す。できれば生え抜きの女性を役員にしたいと考え、株主に「時間がほしい」と説明してきたという。
だが、不二家が上場する東京証券取引所は企業統治指針で、女性の登用を求めるようになった。「時代は変わった」と感じる山田会長は、山崎製パン時代にテレビCMに起用した旧知の酒井さんに打診した。
ここ数年、女性アナウンサーやタレントを社外取締役に起用するケースが相次ぐ。「キャスターなどの豊富な経験」「女性の視点」など起用する理由は各社でいろいろだが、ガバナンス改革の担い手として違和感を感じる人も多い。ネットでは「数合わせ」「広告塔か」との指摘もある。
こうした見方について、酒井さんは「いろいろな意見があるのは当然です」と答える。大学院で学んでいる国際協力の知見を生かし、不二家では「社会貢献についてアドバイスできれば」と話す。
女性を登用する目的とは何か。真の多様性を達成するためには何が必要なのか。3社で社外取締役を務めるジャーナリスト・福島敦子さんのインタビューなどから探ります。
東京商工リサーチによると…

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