蚊は絶滅させるべきか 万博を担う生物学者が今思うこと

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聞き手・瀬川茂子、写真・池田良
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 「いのち輝く未来社会のデザイン」を掲げて2025年に開かれる日本国際博覧会(大阪・関西万博)。プロデューサーに就任した福岡伸一さんは「いのちを知る」というテーマを担当し、パビリオンでの展示やイベントを企画、表現していく。生物学者として何を伝えたいのか聞いた。

 ――1970年の大阪万博の思い出はありますか。

 「当時10歳で、親にねだって2回行きました。かっこいいデザインのチケットは今も保存しています。シャトルバスにぎゅうぎゅう詰めになっていくと、蜃気楼(しんきろう)のようにパビリオンが広がっていた。テクノロジーの明るい未来のイメージ。もう、それだけでわくわくしました」

 ――それから50年、大阪・関西万博プロデューサーに就任された。

 「70年の万博に夢をもった少年として一種の恩返しを考える形になります。しかし、当時夢見ていたようにテクノロジーで、70年万博のテーマだった『人類の進歩と調和』が実現できたかというと、必ずしもそうではない。阪神大震災、福島の原発事故、そして今、コロナの問題。科学技術万能主義に対する反省が迫られている時代だと思う。私自身も科学技術万能主義で一生懸命研究してきたが、今は懐疑的です」

 「そういう視点で70年の万博を見直すと、太陽の塔がある。当時の科学技術万能主義に対するアンチテーゼとして、地に足をつけて文化を考えなさいというメッセージがこめられています。今回も未来志向の展示物の中で、ある種の警告のような、太陽の塔へのオマージュを込めたようなパビリオンを作りたい。そこで生物学者として、人を含めた命とは何かを問い直します」

 ――生命の輝きを象徴するようなパビリオン。絹をつくる野生の蚕「クスサン」の繭のイメージとか。

 「伝統的な絹産業は日本の大事な文化的な遺産です。クスサンの繭は網目状で互いに結ばれている。網目がつながりつつ動的に形を変えていくような建造物ができないか、デザイナーや建築家と相談しています」

もし蚊がいなくなったら、植物が自分に必要な分だけ有機物をつくっていたら…。記事後半では生物の進化や、京都大での福岡さんの学びを聞きました。

 ――クスサンにはクリの害虫…

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