入管報告と診察記録に矛盾 女性死亡問題、深まる疑念

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鬼室黎 伊藤和也
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 死亡の経緯を隠す意図は本当になかったのか――。名古屋出入国在留管理局で3月、収容中のスリランカ人女性が死亡した問題で、出入国在留管理庁が経緯をまとめて公表した中間報告に、女性を診断した医師による診察内容が反映されていないことへの疑念が深まっている。遺族にも死亡の詳しい経緯が伝えられないことに野党が反発する中、政府は審議中の入管法改正案の成立を急いでいる。

 亡くなったのは、ウィシュマ・サンダマリさん(当時33)。面会していた支援団体STARTによると、精神的ストレスで体調不良もあり、食事も歩行もできないほど衰弱していたという。病気などやむを得ない場合に一時的に収容を停止する「仮放免」を昨年12月以降2回申請したが、認められないまま亡くなった。

 入管庁が4月に出した中間報告は、亡くなる2日前にウィシュマさんを診断した医師が「仮放免してあげれば良くなることが期待できる」と指摘したことに触れていなかった。入管庁は記載しなかった理由を「名誉とプライバシーの関係から」としたが、同庁を所管する上川陽子法相は「(その理由で書かなかったのは)少し不十分な状況だ」と不備を認めている。

 このほか、中間報告には「医師から点滴や入院の指示がなされたこともなかった」とあるが、朝日新聞が関係者から入手した2月上旬の診察記録には、「(薬の)内服ができないのであれば点滴、入院」との記載があった。

 ウィシュマさんが受診した病院の消化器内科が作成した「上部内視鏡検査報告書」などの診察記録によると、ウィシュマさんは嘔吐(おうと)を繰り返し、逆流性食道炎の疑いが認められた。記録は「これだけ嘔吐があれば出血ある」として胃酸を抑制する薬で様子を見るとしたうえで、「内服できないのであれば点滴、入院(入院は状況的に無理でしょう)」と記していた。

 同省関係者は取材に、この記録の内容を認めたうえで、「『点滴、入院』というのは、診察の途中経過だ。最終的には収容施設内で薬の投与を続けるという医師の判断で、点滴や入院は指示されていない」と説明した。

 STARTによると、当時のウィシュマさんは食事もできず、嘔吐が続くため、面会にバケツを持って現れた。同団体の松井保憲さん(66)らはウィシュマさんの衰弱が激しいことを心配して名古屋入管に度々、点滴を受けられるよう申し入れを行っていたが、点滴を受けられず3月6日に死亡した。

 ウィシュマさんは2017年に留学生として来日したが、翌18年に学費を払えなくなり学校を退学。その後、在留期間の更新が不許可となり在留資格を失ったまま、滞在を続けていた。昨年8月、同居人からの暴力を警察に訴え出た後に強制退去処分となり、名古屋入管局に収容されていた。(鬼室黎)

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