タンザニアから移住の女性モデルに絵本 長野

滝沢隆史
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 東アフリカのタンザニアから長野県飯綱町に移り住み、故郷の孤児を援助する小林フィデアさんをモデルにした絵本が出版された。日本でひどい差別に遭った過去も描かれ、「ソーテ・サワサワ」(スワヒリ語で「みんな同じ」の意味)の願いも込めた。

 フィデアさんはジャムやワインなど食品製造販売の「サンクゼール」(同町)の社員。現在は町内の「ワイナリーレストラン・サンクゼール」で主に接客を担当している。絵本はサンクゼールが出版した。

 タンザニア南部のソンゲア出身。高校卒業後、1年間の兵役を務め、障害者福祉施設などで働いた。そのころ、青年海外協力隊としてタンザニアに赴任していた同町のリンゴ農家の小林一成(かずしげ)さんと出会い、現地で結婚。1996年の真冬に来日した。

 雪を見るのは生まれて初めて。「アメージングだった」。日本語はまったく話せなかったが、一成さんの父親が昔話の絵本を読み聞かせてくれ、一緒にテレビドラマを見ながら覚えた。持ち前の明るさで日本の生活にも溶け込み、98年からは友人の紹介でサンクゼールで働き始めた。

 現地の学校で「日本は経済大国」と教わった。実際に日本の豊かさを目の当たりにすると、故郷の孤児たちのことが頭から離れなくなった。90年代のタンザニアは、貧困やエイズウイルスが蔓延(まんえん)していたという。実家では母親が孤児を受け入れて面倒を見ていた。フィデアさんは給料の一部を仕送りするようになった。

 それを知った会社の同僚たちは、看板商品のジャムを売って一部を支援に回そうと提案。サンクゼールは2009年からフィデアさんのレシピでフルーツジャムを作り、1瓶売れるごとに100円を寄付することにした。ジャムによる寄付はいまも続き、昨年までで計約3800万円。100円で米は5合、豆なら1キロ買えるという。

 絵本のタイトルは「フィデアの奇跡のジャム」。タンザニアでの幼少時代から一成さんと出会って来日、ジャムを売り出して孤児を支援するまでの様子を紹介している。絵は、現地在住の画家らが鮮やかな色彩の画法で描いた。

 フィデアさんは10年に孤児支援のNPOを設立。ジャムの寄付などで、これまでに実家の近郊に広大な土地を購入して井戸を掘り、孤児院を2棟建てた。現在約80人の孤児を支援しており、将来は孤児院を10棟に増やすことが目標だ。「困っている人を助けるのは当たり前。絵本を通じて多くの人に活動を知ってもらい、支援の輪が広がってほしい」と期待する。

 絵本では、来日してしばらく経ったころに差別を受けたつらい体験にも触れている。フィデアさんが長野市内の靴店で靴を手にとると、店の男性から「汚れるから触らないで」と追い返されたという。

 フィデアさんは「本当に悲しかった」としつつも、「人間は弱い存在。許すことが大事。『ソーテ・サワサワ』の気持ちも一緒に伝わればうれしい」と話す。

 絵本は2200円(税込み)。サンクゼールが展開する全国の多くの店舗のほか、通信販売もしている。(滝沢隆史)