奈良の大仏から映える鉄食器作りへ 鋳物企業の挑戦

渡辺元史
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 世界遺産東大寺の大仏を造った鋳物職人の流れをくむとされる鋳物製造業「五位堂工業」(奈良県香芝市)が、連綿と続く地域産業の知名度を高めようとクラウドファンディング(CF)に挑戦している。集まった資金を使い、新たに日用品ブランドの開発をめざす。

 同社によると、鋳物職人を束ねる棟梁(とうりょう)は鋳物師と呼ばれ、五位堂では奈良時代が起源とされる五位堂鋳物師が中世から近世にかけて多く活躍した。大坂の陣のきっかけにされた「国家安康」の銘文で知られる方広寺(京都市)の釣り鐘の鋳造にも関わったという。

 農具や日用品を作ってきたが、戦後は工業製品の製造が中心となった。南部鉄器(岩手)や高岡銅器(富山)などに比べて知名度が低い。そのため同社は伝統技術の継承に向け、CFの活用を決めた。

 工業製品を作り続けてきた技術を、鉄の食器など日用品の製作に生かしている。鋳物本来の色は灰色だが、食卓に映えるよう白や赤などの塗装を施す。

 CFの目標額は100万円。3千円から10万円までの計13コースから選べる。寄付すれば鉄の皿や鍋敷きなどが返礼品としてもらえる。10万円コースでは、工場見学のほか、鋳物師の免許状にあたる江戸時代の職許状(しょっきょじょう)などの古文書や五位堂鋳物師についての説明も受けられる。

 専用サイト(https://camp-fire.jp/projects/view/311553別ウインドウで開きます)で6月13日まで寄付を受け付ける。同社の津田家仁社長(32)は「鋳物や五位堂鋳物師の歴史を含めた魅力について知って欲しい」と話す。(渡辺元史)

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