契約書のデジタル化で被害増? 消費生活相談現場の懸念

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聞き手・小林未来
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 契約書面のデジタル化などを盛り込んだ特定商取引法(特商法)の改正案が国会で議論されています。野党側は「契約書面がデジタル化されれば、悪質な契約内容に気づきにくくなって被害の拡大が懸念される」と主張しています。全国の消費生活センター窓口の消費生活相談員らでつくる公益社団法人・全国消費生活相談員協会の増田悦子理事長に、問題点を聞きました。

悪質業者が多い分野なのに

――契約書面のデジタル化について反対されていますね。

 デジタル化の有益性や効率性を否定しているわけではありませんが、特商法は、訪問販売や電話勧誘販売、マルチ商法などもともと詐欺的・威圧的な勧誘が多発してきた取引を規制しています。通常のビジネスでは考えられないような悪質業者が多くいて、特に消費者保護が必要とされている分野だということを踏まえて考えなくてはなりません。

――契約書がデジタル化されても契約内容が変わるわけではありません。なぜ被害拡大の恐れがあるのでしょう。

 デジタル化された契約書を渡す場合、例えば訪問販売なら、業者は消費者にタブレットなどで契約内容が書かれた書面をスクロールしながら見せたうえで、消費者にタブレットに手書きの署名をしてもらうこともあるでしょう。業者が「契約書はメールで送っておきますね」と言って帰っていったとしたら、契約書は手元に残りません。

 訪問販売でも電話勧誘でも、契約書面はメール添付などの方法で送られて来ることになりますが、それを開かないままの消費者も出てくると思います。そうなれば、説明と異なる契約内容に気づかないまま、ということが考えられます。

 また、セールストークを信じて契約してしまった場合、商品やサービスをよいものだと思っているだけに、契約書を読み直すということはますます考えにくく、デジタル化した契約書が送られっぱなしになる、ということは大いにあり得ると思います。

クーリングオフ制度 気づける?

――クーリングオフ(無条件解約)制度もあります。

 特商法には、クーリングオフの規定があり、契約書に記載するよう定めています。訪問販売・電話勧誘販売なら契約書の交付から8日、マルチ商法なら20日が経つまでなら解約できますが、この期間を過ぎてしまうと、返金交渉は一気に難しくなります。

 契約書にはクーリングオフの条項を赤字で一定以上の大きさの文字で書かなければならないルールになっています。これがデジタル化された契約書の場合、何枚もある契約書をスクロールしていかなければならず、クーリングオフ条項に気づけるでしょうか。紙の書面は、一目見て見渡せる一覧性が高く、気づきの機会になると思います。

 威圧的な勧誘で断り切れずに契約してしまった高齢者らは、「契約は自分の責任」と考えて、お金を支払ってしまうことがあります。クーリングオフ条項が、赤字で一定以上の大きさの文字で記載しないといけないと決められているのは、そうした知識がない消費者にも目にとめてもらい、救済を図るための工夫です。

 クーリングオフの期間後に消費者が業者の勧誘の際の違法性をいくら訴えようとも、言った言わないの争いになり、いい加減な対応をする業者はたくさんいるのです。

家族やヘルパーの発見 不可能に

――紙の契約書があることで被害相談に結びついたことはありますか。

 実際のケースで言えば、台風…

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