「対話で市民納得できる判断を」 西原茂樹前牧之原市長

玉木祥子
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 【静岡】東京電力福島第一原発の事故は原発の立地自治体だけでなく、周辺自治体にも大きな被害をもたらした。政府から浜岡原発の停止要請があった2011年5月、立地する御前崎市に隣接する牧之原市の市長だったのが西原茂樹さん(67)。10年後の思いを聞いた。

 ――浜岡原発の停止から14日で10年になります。

 「(10年前は)何年か経てば再稼働について何かしら結論が出ているものだと思っていた。だが、今も原子力規制委員会安全審査は継続中。当時から見れば『ありえない』と思うだろうが、原発はそれだけ大きな課題なのだろう」

 ――当時はどんなことを考えましたか。

 「福島第一原発の事故は想像を絶するものだった。南海トラフ地震が想定されているこの地域にとってはひとごとではなかった。浜岡は福島第一原発と同じ沸騰水型炉でもある。市民にアンケートを実施すると、『停止』か『廃炉』を求める意見が約6割を占めた。市内の企業には聞き取り調査をし、市民と企業の意見を市議会に出して、原発稼働の判断を聞いたところ、9月に『永久停止』と決議した」

 ――「永久停止」とは思い切った言い方ですね。なぜ決断できたのでしょうか。

 「『永久停止』という言葉は市議会から出た言葉で、私も支持した。市議会で永久停止を求める決議は県内で初めてだった。原発がある御前崎市は原発関連の交付金や固定資産税などで大きな恩恵を受けている。それに比べると、牧之原市など周辺市町はほとんど受けていない。当時、御前崎市固定資産税と合わせ、予算の約4割が原発関連の交付金だったが、牧之原市は予算のうち原発関連の交付金は1%もなかった。こうした状況もあって『永久停止』と言えたのだと思う」

 「10年経っても、放射能が強くて人が近づけず、溶け落ちた核燃料の取り出しは難航し、いまだ事故の全容がつかめていない福島第一原発の現在の状況をみると、あの判断をしてよかった」

 ――牧之原市が毎年実施している意識調査では停止を求める人の割合が昨年44・5%と過去最低となりました。

 「風化している結果だろう。原発がどういうものなのかを、市をはじめ行政がきちんと伝えていく必要がある。影響を一番に受けるのは実際に住んでいる市民だ。市民の考えをふまえて浜岡原発の行く末を決めてほしい」

 ――市民の考え方が大切なのですね。

 「市民自らが考えられる機会を作るべきだと思い、2016年に市民が進行役を務めて市民と中部電力の社員が意見交換をする場を設けた。意見を対立させるのではなく、逆の意見も聞いて理解を深める『対話のプロセス』が重要だ」

 「国や県、市町のトップや専門家だけで決めるのではなく、そこに住む人たちも議論に加わるべきだ。これがあるのとないのでは、何か判断が出たときの市民の納得感も違ってくる」(玉木祥子)