建築は誰のために 伊東豊雄と渋谷・コロナ禍・東京五輪

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大野択生、編集委員・大西若人
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 東京・渋谷の中心部に長年事務所を構える建築家の伊東豊雄さん(79)。再開発で変わりゆく渋谷の街並みやコロナ禍、そして揺れる東京五輪について、いま何を思うのか、聞きました。

 ――去年からコロナ禍が続いています。昨年春の弊紙インタビュー連載「人生の贈りもの」では、「この機会に技術に絶対の信頼をおく近代主義思想を再考するべきでしょう」とおっしゃっていました。考えに変化はありますか。

 「私のオフィス(伊東豊雄建築設計事務所)は渋谷駅の近くにあります。渋谷駅の再開発を見ていると、モダニズムの建築がグローバル経済と結びつき、『市民のための建築』を革新するという精神が完全に失われてしまっている印象を受けます」

 「近代主義の思想は『人間は独立した個であり、自然を技術によって克服できる』と言っていたわけです。しかし、3・11に始まって、地震や大雨、台風といった災害が続き、そこにまたコロナ禍があり、『人間は自然にはかなわない』ということをこの10年間で見せつけられました。3・11の前から『自然をどうやって近代建築の思想の中に取り込むか』ということを考えていましたが、まったく思った通りだったなという気がします」

 「またコロナ禍でテレワークやオンラインでのミーティングが多くなる中で、『建築は人間の生(なま)の身体と関わっていかないとダメだ』と再認識しています。Zoomなんかを経験すればするほど僕は逆に、これはちょっとダメだな、と(笑)。ある意味アナクロ(時代錯誤)に聞こえるかもしれないですけど、建築は人間の身体と関わっていくことをますます強く要請される気がします」

渋谷駅近くにある伊東さんの建築設計事務所で働く若いスタッフは、誰一人として「再開発で便利になった」と言わないそうです。なぜか。東京五輪の開催延期で揺らいだ建築家の役割についての考え、最近の日本の公共建築のコンペが抱える問題とあわせ、記事後半で伊東さんが語ります。

 ――「生の身体と関わる建築」とはどういうものですか。

 「近代では、人間は自然から…

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