コロナ禍の今こそ着る 石戸諭さんのコムデギャルソン愛

有料会員記事ファッション

聞き手 編集委員・後藤洋平
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 「この人はスタイリストをつけず、自前の服を着ている」。ファッション取材を続けていると、テレビで発言したりSNSで発信したりする言論人を眺めながら、そう確信する時がある。決め手は、服のつくり手、あるいは着る人自身の「精神」とも取れる雰囲気が装いに表れているかどうかだ。

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 「少なくとも1シーズンに1着はコムデギャルソンオムプリュスの服を買う」と話す石戸諭さん。取材時も、同ブランドの21年春夏シーズンのジャケットとベストだった=山本倫子撮影

 ノンフィクションライターの石戸諭さん(37)も、ありふれた服を選ばない一人だと感じてインタビューを申し込んだ。「自分の想像を超える」コムデギャルソンの服と、「自分でコントロールできる」というオーダースーツなどのテーラードスタイルを、ともに愛している。特に川久保玲が手がける服は、仕事をするうえでの石戸さんの姿勢にも影響を与え続けているといい、「コロナ禍のこんな時代だからこそ、コムデギャルソンは着る価値のある服」と断言する。

      ◇

 僕にとってモードファッションといえば、コムデギャルソンです。ずっと好きでしたが、実際に初めて購入したのは毎日新聞で4、5年目の記者生活を送っていた頃でした。社会人になってお金がたまったから、という理由で、オムプリュス(川久保が手がけるメンズライン)の定番のウールジャケットを選びました。

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これまでに買った服の数々について、笑みを交えて語る石戸諭さん=山本倫子撮影

 なぜコムデギャルソンか。やっぱり川久保さんのことを、非常に尊敬しているというのが大きな理由です。彼女は責任を伴った企業のトップ、ビジネスパーソンでありながら、斬新なクリエーションと両立をさせている。

 一見するとアート作品のようでありながら、服になっている。つまり、商品として成立する服です。今着ているのも元はテーラードジャケットですが、それをビシバシと解体して再構築している。ベーシックなものに極端に手を加えながら、絶妙なバランスで服として成り立っている。「ジャケットとは何か」ということまで考えさせられるような構造です。

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ルイスレザーのライダースジャケットを着用する石戸さん=本人提供

 僕が好んで着ているルイスレザーというブランドのライダースジャケットがあるのですが、それも川久保さんが長年着用されているので、いつかは着てみたいと思ってきました。高価ですが頑丈という、一生ものの服なのですが、着てみて分かったことがあります。川久保さんが、あの服を好んでいることから分かるのは、実は完成されたものがお好きなのだということです。

 たとえばルイ・ヴィトンのバッグをデザインする際には、穴をくりぬいたりもするけれど、あれだって基本の形をリスペクトしたうえで、全く新しいものを作り出している。大変興味深いです。

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川久保玲がデザインしたルイ・ヴィトンのバッグ=後藤洋平撮影

 自分もライターとして、いつも新しいテーマを世に問いたいと思っています。それにはエネルギーが必要です。加えて、出した本や僕の文章が掲載された雑誌を買ってくれる人がいないと、フリーとして生活できない。つまり、僕も新しいものを出すこととビジネスを両立させないといけないのです。そういう意味でも、川久保さんから影響と刺激を受けています。きちんと「パワーのあるもの」「強いもの」を、僕はジャーナリズムの世界で出し続けないといけないのだ、と。そんなわけで、僕が持っているモードの服は、完全にギャルソンがメインです。

 コロナ禍になって、ファッシ…

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