異色の女性工務店 効率悪く給料は…でも働いてよかった

照井琢見
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 松山市の工務店「クラス」は「女性工務店」をうたう。代表も設計士もインテリアコーディネーターも、すべて女性。「働き方」にこだわり、「男社会」のイメージがある建築業界を、生き抜いてきた。

 クラスの事務所は、松山市高山町の住宅街にある。スタッフ7人は、すべて女性。建設会社を退職した代表の矢野陽子さん(50)が2016年7月に立ち上げ、住宅建築の設計や施工に携わってきた。

 「前の会社で、ずっと女の人だけのチームがあればいいと思っていた」と矢野さん。相談に来た女性客が、男性の設計士や営業職の前で遠慮したり、言いたいことをうまく伝えられなかったりする様子を見てきた。「家事をしてきた女性客の感覚を、理解できない男性もいましたね」

 クラスでは「暮らしやすい家」を目指して、家のプランを話し合う。夫婦で来る客の中には、「食器洗い機なんかいらんやろ」と言う夫もいて、それを我慢する妻も多い。そんなときは「グラスも熱処理できますし、清潔ですよ」と後押しする。「家を使う頻度が高い女性どうし、細部まで何が便利かをわかっているので、話しやすいと思う」

 力仕事のイメージがある工務店だが、家を建てる大工は外注している。設立以来、県内で10棟の新築物件を建ててきた。「女性が少ない業界だが、成立している」と矢野さん。こだわってきたのは「柔軟な働き方」だ。

 クラスでの勤務シフトは、スタッフ自身が話し合って考える。土日休みの人もいれば、土日どちらかは休むと決めている人もいる。フルタイムで働く人もいれば、午後3時退勤の人や、かつては週に1~2日出勤の人もいた。

 「効率は悪い」という。建築業界は一般に水曜休みが多く、稼ぎどきの土日にフル稼働する会社が一般的だ。だから収益は他の会社より少なくなる。

 「よそよりも給料は少ないですよ、と応募してきた人には伝えています」。月収の高さより、働き方を選べることが大事。そんな人を募っている。

 もともと「仕事大好き人間」という矢野さん。クラスを立ち上げる前は、土日は建築士の夫に長女を任せ、バリバリ働いてきた。

 転機は、長女が大学に進学して家を出たこと。ふと、「あのとき、遊んであげたらよかった」「なんでほったらかしたのか」と後悔が募った。「働いている人が『ここで働いてよかった』と思える。それを第一に考えようと決めた」

 スタッフの多くは、産休、育休明けの女性たち。キャリアを積み、技術を持っていても、「もうこの業界で働くのを諦めていた」という人が、クラスに集まっている。

 「働き方を柔軟にして、環境さえ整えれば、女性はいくらでも『頑張りたい』と思えます」と矢野さん。かけ声だけの「女性活躍」に、「家庭も顧みず、相当頑張ってくれる女性を探していないでしょうか。そういう企業は、女性に働きやすくなってほしいとは思っていないんじゃないかなと感じます」と釘を刺す。

 建築業界では異色の「女性工務店」。地方の小さな会社の取り組みに、男性中心の日本の企業社会が変わるヒントがある。

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 問い合わせは、電話(089・951・4500、水曜休み)かホームページ(https://kurasu-ehime.com/別ウインドウで開きます)へ。(照井琢見)

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男女格差が153カ国中121位の日本。生きにくさを感じているのは、女性だけではありません。だれもが「ありのままの自分」で生きられる社会をめざして。ジェンダーについて、一緒に考えませんか。[記事一覧へ]