橋、迫られるリストラ 3割が耐用年数に、延命か廃止か

澤田歩
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 自治体が橋のリストラを迫られている。老朽化し寿命を迎える橋が増え続け、国などはその延命へとかじを切る。しかし、東北では東日本大震災の被害を受けた影響も大きい。震災から10年が過ぎ、復興が新しい局面に入った今、橋の未来はどう描かれるのか。足元の動きを追った。

 全国に橋は約72万橋(国交省調べ)ある。多くは高度成長期の建造だ。橋の耐用年数は約50年とされ、築50年以上の橋は30%(2020年)を占め、10年後は55%となる。

 東北の橋は厳しい状況に置かれている。厳しい風雪や低温に加え、地震や津波で「古傷」を負い、復興事業の輸送で激しい酷使が続いた。

 維持・更新が追いつかなければ、廃止するしかない。だがそれは簡単ではない。橋がなくなれば、孤立する地域もでてくるからだ。だが、ある意味で震災は、橋を整理する好機でもあったと言える。

 甚大な被害を受けた宮城県石巻市。津波を受けて高台移転が進んだ低い地域では、橋のニーズや重要性が減る。東北大土木工学が専門の久田真教授は、同市に橋のリストラを助言していた。「近くの橋でカバー可能なら、積極的に廃止も検討すべきだ」と。

 しかし同市では、逆に今も橋の新造が進む。旧北上川の河口付近に約92億円かけて建設中の「石巻かわみなと大橋」だ。近くには、県管理の「日和大橋」があるのにだ。

 同市の人口を管理する橋の数で割った「1橋を支える人口」は136人。隣の仙台市は約10倍の1339人だ。久田教授は、この「格差」を示し、橋の整理を勧めていた。

 格差は全国で広がる。3300人で1橋を支える東京に対し、全国平均は192人。東北で平均を上回るのは宮城と青森だけ。秋田はわずか90人で支えている。「これだけの格差があるのに、受益者負担でまかなえというのは理不尽だ」と、久田教授。

 橋の延命にかじを切った国は14年、5年に1度の橋の点検を義務付けた。その結果、早期または緊急に措置が必要な橋は6万9100橋を数えた。うち、手当てに着手できた橋は約2割にとどまる。

橋にカルテ、主治医で延命治療

 青森県は、他県に先んじて橋の延命に取り組んできた。県土整備部は「積極的に維持管理すれば、50年間で橋にかかるコストを、約3割に圧縮できる」と、試算している。

 今「東北インフラ・マネジメント・プラットフォーム」が注目されている。東北大、八戸工大、岩手大秋田大、日大が近隣自治体などと組み、インフラの維持管理を支える。橋などのカルテをデータベース化、整備計画に役立て、人材育成にも取り組む。

 具体例のひとつが、19年に山形県上山市であった赤山橋の大規模改修だ。市と組んだ東北大岩手大の支援下で最新技術を導入、地元企業が施工した。身近に「橋の主治医」ができ、事業費も地域に還元され「維持管理を通じて健全なキャッシュフローを構築できる」と、久田教授。

 「工期は短く、コストも抑えられた」と語る横戸長兵衛市長は「今後も大学との連携を生かし、社会資本の整備・維持を進めたい」と話す。

 地元大学を軸に、地域の産官学の連携体制をいかに構築するか。それが、橋などの社会インフラを上手に維持管理する「解」となりそうだ。(澤田歩)