路線バス、野菜も乗せて産直へ 三田

鈴木春香
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 【兵庫】高齢化や人口減少が進む地域の路線バスで乗客とともに青果を運ぶ取り組みを、神姫バス(姫路市)とJA兵庫六甲(神戸市)が始めた。乗客数が落ち込む路線に新たな収益をもたらし、生産物を運ぶ手段に悩む高齢農家の助けにもなるとして、今後拡大も検討するという。

 7日午前11時ごろ、三田市下里の停留所「高平小学校前」。野菜の入った青いケースが五つ、バスに積み込まれた。JA兵庫六甲高平支店の職員が立ち会い、神姫バスの運転手がビニールのカバーをかけてベルトで固定。約10キロ離れた直売所「パスカルさんだ一番館」まで、30分ほどかけて運ばれていった。

 停留所近くに住む西田直美さん(83)はこの日、ホウレン草、ラディッシュ、せり、仏花の4種類を持ってきた。10年前までは夫が運転する車で直売所まで運んでいたが、夫の他界後は娘や知人に頼んで車を出してもらっていたという。「都合が合わないこともあり気兼ねした。バスで運んでもらえるのは本当に助かる」

 神姫バスによると、この路線(三田―小柿線)の昼時間帯の乗客は1便あたり10人弱。沿線人口の減少で路線の維持が課題となる一方、車内には十分な空きスペースがある。青果の運賃は1ケースが小200円、大250円で生産者が負担する。この日は計5ケースで1050円。高平小学校前からパスカルさんだ近くまでの大人運賃でほぼ2人分になった。

 一方、JA側も近年、生産者の高齢化による出荷の減少に危機感を募らせてきた。パスカルさんだには三田市内で617の生産者が登録されているが、減少傾向にある。生産はできても、運ぶ手段がないことが要因の一つだという。JAの担当者は「バスでの運搬が、生産者の意欲の維持につながってほしい」と話す。

 乗客と生産物を運ぶバスは週2回、一日1便で実施する。積めるのは1便あたり350キロ未満で、利用者は前日までに予約が必要だ。神姫バスの担当者によると、JAの他支店からも問い合わせがあり、他の路線での導入も検討していくという。

 近畿運輸局によると、人と荷物を一緒に積む「貨客混載」は、過疎地の交通網維持などの観点から国交省が2017年に規制を緩和して以降、徐々に広がりを見せている。ただ、関西で農産物を運ぶ例はまだ少ないという。

 コロナ禍で交通機関はさらに利用者の減少に苦しんでおり、補助収入にしようと導入する例もみられる。新幹線でとれたての魚を新鮮なうちに都市部へ運ぶ動きなども出てきた。

 神姫バスも、コロナ前に比べて路線バスの乗客数は約2割減り、収入の柱だった高速バスでは半減した。貨客混載は、グループ会社が宍粟市の路線で郵便物を運ぶ例があるが、新たな収益源を模索するなかで青果にも拡大した形だ。神姫バスの担当者は三田市での取り組みについて「補助収入になり高齢者にも喜んでもらえる。ウィンウィンです」と話す。(鈴木春香)