陸上長距離、福島県出身者の活躍の理由は

滝口信之
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 「陸上王国」「長距離王国」と呼ばれる福島県――。前回の東京五輪では円谷幸吉さん(故人・須賀川市出身)が男子マラソンで銅メダルを獲得し、今回も須賀川市出身の相沢晃選手=旭化成=が男子1万メートルで代表に内定する。相沢選手を含めた県陸上界を代表する4人に理由を聞いた。

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 福島の駅伝と言えば、ふくしま駅伝。1995年の「ふくしま国体」開催に向け、長距離選手強化の一環として89年に始まり、白河市から福島市までの約95キロを市町村対抗で中学生から社会人までの男女16人がタスキでつなぐ。

 東洋大時代に2代目「山の神」として箱根駅伝で活躍した柏原竜二さん(いわき市出身)は中学の頃から出場。「中高生時代、社会人や大学生の選手と同じチームで練習したり、話を聞いたりすることができ、刺激を受けた」と振り返る。

 同じく中学から出場する相沢選手も「ふくしま駅伝で初めて代表に選ばれ、代表に選ばれる喜びを知った。市の次は県の代表、次は日本代表を目指そうと思えるきっかけの大会だった」と話す。会津若松市出身で、今年の箱根駅伝で優勝した駒沢大を率いる大八木弘明監督は「私が現役時代はなかった大会。ふくしま駅伝のおかげで競技者の裾野が広がり、長距離が盛んになったのでは」と指摘する。

 「同郷に目標とする選手が多い」も一致した見方だ。大八木監督は円谷さん、相沢選手は柏原さんに憧れた。

 2019年の全国都道府県対抗男子駅伝で福島県を初優勝に導いた安西秀幸さん(会津若松市出身)は、北京五輪男子マラソン代表の佐藤敦之さん(会津坂下町出身)を目標とした。「全国都道府県対抗男子駅伝やふくしま駅伝などで憧れの選手と一緒に練習する機会が多い。憧れの選手が結果を出せば、『自分たちも』となり、夢を抱きやすく、良い見本が身近にいるのは大きい」と話す。

 福島県特有の気質を指摘する声もある。大八木監督は「福島出身の選手は諦めない気持ちを持っていて、負けず嫌い。コツコツやる選手が多く、長距離向き」と話し、相沢選手は「柏原さんなど粘り強く、最後まで力を振り絞れる選手が多い。長距離は福島県人に向いているのでは」と分析する。

 指導者の多さも特徴だ。今年の箱根駅伝では、関東学生連合を含む21チーム中4チームの監督を福島県出身者が占めた。東京五輪の男子マラソン代表内定の中村匠吾選手(富士通)は大八木監督が今も指導し、同じく代表内定の服部勇馬選手(トヨタ自動車)は東洋大時代、石川町出身の酒井俊幸監督から教えを受けた。

 安西さんと柏原さんは「面倒見がよく、熱い指導者が多い」と指摘する。大八木監督や酒井監督らは試合会場ではよく話をしていたといい、安西さんと柏原さんは「指導者同士仲が良く、よく情報交換をしている。それが切磋琢磨(せっさたくま)につながるのでは」と話す。

 95年から駒沢大で指導する大八木監督は「選手として五輪を目指していたが、かなわなかった。次は指導者として世界で活躍するランナーを育てるという目標で指導している。それは後輩の指導者たちも同じだと思う」と指摘。「始めた頃は福島県出身者は自分一人。今では指導者が増え、結果を残さないと追い抜かれる。県内出身の監督や選手は意識しながら指導に当たっている」と話した。(滝口信之)

主な福島県内出身の長距離選手と指導者

・三浦弥平(伊達市出身) 1920年アントワープ、24年パリ五輪男子マラソン代表

・円谷幸吉(須賀川市出身) 1964年東京五輪男子マラソン銅メダル

・大八木弘明(会津若松市出身) 駒沢大陸上競技部監督。東京五輪男子マラソン代表内定の中村匠吾を指導

藤田敦史(白河市出身) 元マラソン日本記録保持者

・酒井俊幸(石川町出身) 東洋大陸上競技部長距離部門監督。東京五輪男子マラソン代表内定の服部勇馬を大学時代に指導

佐藤敦之(会津坂下町出身) 2008年北京五輪男子マラソン代表

今井正人南相馬市出身) 初代「山の神」。2015年陸上世界選手権男子マラソン代表(大会は欠場)

・安西秀幸(会津若松市出身) 駒沢大主将として箱根駅伝優勝

・柏原竜二(いわき市出身) 2代目「山の神」として箱根駅伝で活躍

・相沢晃(須賀川市出身) 1万メートル日本記録保持者。東京五輪男子1万メートル代表に内定