「天使の唇」フルーツのようなミニトマト 皮薄くて繊細

会員記事

緑川夏生
[PR]

 昨年春、農産物直売所で、ふと目にしたミニトマト。「天使の唇」という名前にひかれて試食すると、まるでサクランボのように皮が薄くてぷにっと柔らかい。フルーツのような甘さにトマトの概念を覆されたようで、思わず買い物カゴに入れてしまった。

 そんな魅力的なトマトを栽培しているのは、新潟市西蒲区の角田山麓にある農園「たくみファーム」。今月上旬、2棟のビニールハウスには、葉が生い茂ったトマトの苗に青い実がついていた。「これから数週間で一気に色づきます」と農園代表の新沼史智さん(45)は話した。

 ミカンと同じ水準という糖度10度。甘さの秘密は、水を極限まで減らした栽培方法にある。与える水量は、気温ではなく日射量で決める。蒸発しやすい晴天の日にだけ少量の水を複数回に分けて与えることで、甘さが凝縮し、実割れも防ぐ。花も1割減らし、養分が届く実を制限している。

 農園をつくったのは、実は東京のIT企業だった。2015年、「障害者が働ける場を」と設立。障害者施設の運営に携わり、スイカ農家出身で農業の知識もあった新沼さんが農園の代表に就いた。もともと新沼さんはこのIT企業の職員だったが、18年末に独立。新潟市内の農業関連商社「冨山」と連携し、経営を続けている。

 このトマトを選んだのは理由がある。農業未経験者でもできる作業が増えるよう、あえて手間ひまのかかる作物を探したという。皮の薄さから収穫に機械が使えず、繊細な手作業が必要なのだ。

 農園のスタッフは新沼さんら約10人で、半数が自立訓練の一環としてやって来た障害者施設の利用者だった。新沼さんは、作業を理解しやすいように指導法を工夫したり、安全確保のためのハウス内の注意書きを絵で表示したりした。

 「説明すれば、しっかりとやってくれる。彼らがいたから、業務が回っていた」。農園での仕事をきっかけに周囲との会話ができるようになったり、疲労から睡眠薬なしで眠れるようになったりした人もいて、その点でも成果が生まれていたという。

 それが、この農園も新型コロ…

この記事は会員記事会員記事です。無料会員になると月5本までお読みいただけます。