「地元の理解」得られたか 馬毛島でデモ飛行

奥村智司
[PR]

 【鹿児島】馬毛島への米軍訓練移転をめぐり、計画の賛否両派の地元住民は、軍用機の騒音を懸念材料とする。防衛省は16日、自衛隊機によるデモ飛行を実施した。果たして「地元の理解」を得ることにつながったのか。

     ◇

 デモ飛行は午後3時半と午後6時から、1時間実施された。3時半からは空自F15戦闘機が6機で飛行する予定だったが、防衛省によると馬毛島周辺に到着した段階で1機に不具合が判明。5機で行われた。

 塩田康一知事は、馬毛島が正面に見える西之表市の県熊毛支庁の屋上から視察した。F15の姿は、約10キロ離れた馬毛島周辺を飛ぶ時は目視でようやく確認できるほど。雲に隠れて機影が見えないこともしばしばだったが、低いエンジン音が断続的に市街地に響いた。

 6時から薄暮の中で行われた2度目の飛行。交通量などが減ったためか日中と比べて辺りは静まり、音はより大きく感じられた。

 防衛省は、市内の合同庁舎など6自治体の14カ所で騒音を計測し、結果を後日公表する。県環境林務部も支庁の屋上に騒音器を持ち込み、独自に計測した。

 騒音の程度を示す目安は、70デシベルで「高速道を走行中の車内」「騒々しい事務所内」、60デシベルで「走行中の車内」「デパート店内」レベルとされる。県によると、飛行中の騒音はおおむね55~63デシベルの範囲で、日中の最高値が71・7デシベル、夕方は67・0デシベルだった。

 西之表市街の近くを飛んだ時よりも、タッチアンドゴーをする代わりにエンジン出力を上げたとみられる時のほうが音が大きかった。エンジンが種子島側に向くルートで、最高値に達したとみられている。

 市商工会の荒木政臣青年部長(37)は計画に賛成の立場。市役所近くでデモ飛行を見て、「騒音は思ったほどではなかった。屋内、車内にいた時に響くレベルではないと思う」。一方、同じく市役所近くにいた反対派の住民団体のメンバー、向井稔順さん(50)は「上空を旋回するだけでこれだけの音がする。実際に夜間に訓練が行われれば、市民生活に大きな影響が出るだろう」と話した。

 計画に反対の八板俊輔市長は日中の飛行終了後、報道陣に「防衛省はタッチアンドゴーに近い状態にするよう苦慮したと思うが、実際と違うのだろうと想像しながら見た」と述べ、重ねてこう言った。「馬毛島種子島の海峡を戦闘機が飛ぶ姿は異様な感じがした」

     ◇

 塩田知事はデモ飛行後、「それぞれの地点で住民の皆さんが感じたところで、(馬毛島をめぐる計画への賛否の)判断材料として頂ければ」と話した。

 「音の聞こえ方は個人差があり、ミスリードがあってはいけない」と感想は述べなかったが、「今後示される地元の受け止めを評価する際の、私なりの『心証』には影響を与える可能性がある」と述べた。

 塩田知事は、馬毛島の計画に対する県の考えをいずれかの段階で明らかにするとしてきた。「デモ飛行の地元の受け止めですべてを判断する材料にはならないだろう」とし、県の考えの表明は、防衛省環境影響評価(アセス)で騒音などの影響予測を示す「準備書」の提出後になるとの考えを示した。準備書を補正した「評価書」やアセス完了まで待つかどうかは「先のことなので中身を見て考える」と答えた。(奥村智司)

 防衛省は4月末、馬毛島をめぐる環境影響評価(アセス)の調査手法などを示す方法書に対して寄せられた意見概要を公表した。FCLPを始めとする訓練騒音の「実測」を求めるものが、複数寄せられていた。方法書では、FCLPを含め軍用機の騒音データを基にした「シミュレーション」で騒音を予測する、としているためだ。

 防衛省はそもそも、デモ飛行の結果をアセスに反映させない考えだが、その手法も識者や市民らからの要望とは隔たりがある。

 「できる限り実態に沿った測定でなければ意味がない」。こう指摘する意見では、馬毛島近くに米空母を配置し、FCLPを実際に行う時間帯に米艦載機が飛行実験をすることを防衛省に求め、「(市民が)善しあしを判断して納得を得られる」と訴えた。

 現在訓練が行われている硫黄島(東京)の周辺に測定船を出して調べるべきだとの提案もあった。硫黄島などFCLPが行われる施設での実態調査を欠く手法には、基地容認派からも「看過できない」との批判もあがった。

 米軍機の飛行を日本政府がコントロールできない、という前提を踏まえたアセスを求める意見も複数あった。防衛省は「米軍と調整した」とし、種子島の上空を通らないFCLPのルートを示している。これに対し、「風によるコースアウトも含め、経路を最大限に逸脱した場合のアセスを要望する」とし、「(国内で飛行する)米軍機が経路を外れている事実を市民に説明すべきだ」と求めた。(奥村智司)