カネで分断「植民地政策の手法」 元名護市長の見た8年

聞き手・寺本大蔵
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 米軍普天間飛行場沖縄県宜野湾市)の移設先に浮上して25年近く。辺野古を抱える名護市の歴代市長は5人目だが、「移設反対」を掲げて市長になったのは、唯一、稲嶺進氏(75)だけだ。鳩山由紀夫民主党政権から安倍晋三政権にかけての2期8年。何が起きていたのか。そこから見えたものとは。

 覚悟はしていましたが、えげつないと思いました。(移設への協力を前提とする国の)米軍再編交付金が、市長就任後に不支給となりました。公民館や道路整備など、前の市長が(再編交付金で)始めた事業は終わらせないといけません。当初は、前年度からの継続事業は認めるという話でしたが、『ゼロ回答』。のどまでのみ込んだ食べ物を、取り出されたような感じがありました。

 自民党政権になっても裁判所や会計検査院など、国の組織はいったいなにをしているのかと思いました。(地方自治体の頭越しに)辺野古地区などに直接補助金を出しました。何に使うのかもわからない補助金なんてありますか。日本は先進国でも民主主義国家でもない、地方自治も全くないと思いました。

 言うことを聞く者に対しては権利もカネもあげる。法律を恣意(しい)的に解釈して合法だと言う。カネで人心を分断していくのは、植民地政策の最たる手法です。

 沖縄は面積にすると日本全体の0・6%、人口は1%。離島県で経済的にも非常に不利で、貧しい。先の大戦で焼け野原にされ、ゼロからの出発でした。経済の脆弱(ぜいじゃく)なところに付け込んで、(米軍基地を)押しつけていると思います。

 名護市は人口約6万人です。(地域の中に)声の大きい人、力を持っている人がいると、(異なる意見を持つ住民は)モノが言えません。モノを言えば、村八分にされる可能性があるからです。意思表示をできず黙ってしまうケースがあります。市民は国策に振り回され、住民は分断されてしまいました。(聞き手・寺本大蔵)

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 いなみね・すすむ 1945年生まれ。名護市出身。琉球大卒業後、市役所に就職し、総務部長や教育長を歴任。2010年名護市長選で初当選した。18年市長選で、安倍前政権が支援し、自身は移設の賛否を明言しなかった渡具知武豊氏(現市長)に敗れる。