世界を埋める無意味に驚け 小野田實の「マル」とは何か

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田中ゑれ奈
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 dot(ドット)か、circle(サークル)か、はたまたMARU(マル)か。前衛画家・小野田實(みのる)(1937~2008)が提唱した独自の造形言語は、その作品を海外に紹介する翻訳者たちの頭を悩ませた。一見、無意味な点や円にすぎない「私のマル」。穴や球、筒や亀裂さえも包括するその概念は、めまぐるしい画風の更新とともに姿を変え、驚きをもたらす。

 小野田は7年と短期間ながら、関西を拠点に1972年まで活動した前衛美術集団・具体美術協会のメンバーだった。近年、世界的に「具体」再評価の機運が高まるとともに、小野田の作品も国外流出が進みつつある。「今展のように約240作品という規模で見られる機会は、おそらくもう二度とない」と、兵庫・姫路市立美術館の不動美里副館長。画家が生涯の大半を過ごした郷土の美術館として、意地をかけた大回顧展だ。

 展覧会は、ほぼ時系列で小野田の画業をたどる。小磯良平に憧れていた初期の具象的な洋画から、前衛へと向かう転換期は60~61年。砂や石膏(せっこう)を混ぜて画面に厚塗りし、表層をかき落とした亀裂の奥に別の層を見せる「魚骸(ぎょがい)」や、輪切りにしたポリ塩化ビニール管を埋め込んだシリーズなど、素材も手法も実験的な表現を次々に繰り出している。

 61年に発表した「繁殖絵画…

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