第1回辞退したかった、でも続けた フロイドさん事件の陪審員

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ミネアポリス=藤原学思
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フロイドさん事件 陪審員の証言①
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 裁判所の秘密の地下通路を抜け、静まりかえった地上に出た。そのまま車に乗せられ、「改装中」のホテルへ。そこで会議室に集められた12人の市民は、10時間にわたって、米国内外を揺さぶった事件に向き合った――。

 米ミネソタ州ミネアポリスで昨年5月、ジョージ・フロイドさん(当時46)が殺害された事件で、元警察官の公判の陪審員を務めた男性が取材に応じた。事件は「黒人の命を軽んじるな」と訴えるブラック・ライブズ・マターBLM)が広がるきっかけとなり、その評決は米国内外から強い関心を集めた。

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ブランドン・ミッチェルさん。フロイドさんが亡くなった事件の現場であるミネアポリスで生まれ育ち、いまもそこで暮らす=2021年5月4日夜、米ミネアポリス、藤原学思撮影

 陪審員の男性は、自らも黒人男性として差別に直面してきたこと、事件の残酷さから陪審員をやめたいと思うほど苦しんだこと、そして、有罪が決まった舞台裏と「その後」について、2時間にわたって記者の質問に答えた。その証言を交え、2回にわたり、「世紀の評決」について報告する。

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 今月上旬に取材に応じたのは、黒人男性のブランドン・ミッチェルさん(31)。現在はミネアポリス市内の高校でバスケットボールのコーチを務め、生計を立てている。2018年まで8年間、地元で銀行員としても働いていた。

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ジョージ・フロイドさんが亡くなった小売店「カップフーズ」の前には、フロイドさんが好きだったバスケットのボールが置いてあった=2021年4月21日、米ミネアポリス、ランハム裕子撮影

 事件は昨年5月、ミネアポリス市内の「カップフーズ」で起きた。軽食を食べるスペースもある24時間営業の小売店。市民からは「角の店」「遊び場(ハングアウトスポット)」として親しまれ、ミッチェルさんも幼少期、週末や長期休みの度にお菓子を求めて店を訪れていた。

 事件時に警官だったデレク・チョービン被告(45)は、フロイドさんの首を9分29秒にわたって地面に押さえつけ、死亡させたとされる罪に問われた。事件は高校生の少女がスマートフォンで撮影し、その映像がソーシャルメディアを通じて世界に広がった。

 「またか」。それがミッチェルさんの最初の印象だった。「いつになったらこういう事件は終わるのか」。米紙ワシントン・ポストのまとめによると、米国では警官の手によって毎年約1千人が亡くなる。黒人は白人よりも、犠牲になる割合が高い。

 現場の映像は報道でくり返し流され、BLM運動の広まりにつながっていく。だが、ミッチェルさんは映像を直視できなかった。フェイスブックで流れてきても、数秒後にはすぐ消した。

 「黒人の自分にとって、あま…

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連載フロイドさん事件 陪審員の証言(全2回)

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