韓国食堂、京都市で急増中 「幸せ感」再現で一部に人気

大貫聡子
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 店名はハングルのみ。年季の入った店内にはアルミの丸テーブル――。あれ? ここは韓国だったっけ? そう錯覚してしまうほど、ソウルや釜山(プサン)の市場にありそうな韓国の食堂が京都市内で急増中だ。新型コロナの影響で渡韓できない韓国好きな女性たちの心をとらえている。

 昨年10月にオープンした「ミリネヤンコプチャン」(京都市下京区)は夕方になると焼き肉を楽しむ女性たちでいっぱいになる。店外も店内にもほとんど日本語はない。縦置きのエアコンや天井からぶら下がる店名の入った看板、ティッシュケースや店の外に置かれたビールケースまで、韓国の裏通りにある食堂そのもの。煙でくもった店内で食事をしていると、飛び交う日本語が不思議に思えるほど。まさに歩いて行ける韓国だ。

飾り気ないけど「しみじみおいしいなぁって」

 オーナーの全敞一(ぜんしょういち)さん(38)が神経を配ったのは「韓国風」ではなく、実際に全さんが韓国のある食堂で食べた時に感じた「幸せ感」まで再現することだった。「接客も料理も飾り気はないけど丁寧で、しみじみおいしいなぁって感じたんです」

 牛のミノと小腸を焼いて野菜に包んで食べるヤンコプチャンは釜山(プサン)名物。釜山のホルモン通りに実在する店をイメージし、食器やエアコン、焼酎のポスターなども韓国から取り寄せた。

 新型コロナウイルス感染対策で、営業時間の短縮を求められるなど飲食店には厳しい状況が続いているが、SNSで「本当に韓国に行ったみたい」と20代の女性を中心に注目を集めている。

 今年1月にオープンした「ソガシッタン」(東山区)もソウルの繁華街ミョンドンにある食堂をイメージしてつくった。メインは近江牛でつくるテールスープ。ランチタイムに訪れる女性が想像以上に多いという。取材に訪れた4月11日の昼時に店を訪れていた東山区の歯科衛生士の女性(30)は「ステイホーム中に韓国ドラマにはまって、食べに来た」という。左京区の会社員の女性(28)も、まだ韓国に行ったことはないといい「コロナが終わったら、実際に行ってみたい」と話した。

 釜山の郷土料理「ナッコプセ」を提供する「ナム京都駅本店」(下京区)も、青いシートで覆われた屋台「ポチャマチャ」を模した店内が話題になっている。同店を経営する月山昇龍(しょうりゅう)さん(35)によれば、「五感で感じる韓国」が店のコンセプト。食器やプラスチックのイス、蛍光灯に至るまで実際のポチャマチャを再現したという。2019年5月のオープン以降、京都と大阪に支店を拡大、計5店まで急成長した。

 コロナ禍のステイホームに端を発する第4次韓流ブームも注目を集める理由の一つだ。韓国ドラマ「梨泰院クラス」や「愛の不時着」が人気を博したものの、以前のように気軽に渡韓はできない。月山さんは人気の理由を「韓国に行きたくても行けない人たちが、味だけでなく空間でも韓国を味わいに来ている」と分析する。

 緊急事態宣言で、ナムは5月末まで休業。他の店も営業時間が通常から変更されている。(大貫聡子)

第四次韓流ブーム「受け手のアンテナも高く」

 日本国内にある各地の韓国料理店を、20~30代の女性8人で紹介するインスタグラム「hanilog(ハニログ)」を運営する宮口佑香さん(30)によると、「以前は『インスタ映え』を求める人が多かったが、最近はきれいさよりも、リアルな韓国が良いと思う人が増えている」と話す。

 ハニログがインターネットで52人を対象に、飲食店で「韓国にいるみたい」と感じるポイントを尋ねたところ、店内に韓国語が飛び交っていることや、韓国のテレビ番組が流れていることなど、雰囲気を重視する人が多かったという。

 コリアン・フード・コラムニストの八田靖史さんは、第4次韓流ブームの影響で、韓国系の飲食店の出店が全国で相次いでいると指摘する。店の雰囲気だけでなく、料理も現地感が重視されているという。八田さんは「韓国の地方の郷土料理を日本で食べられるようになるなど、提供される韓国料理の切れ味が鋭くなっているし、受け手のアンテナも高くなっているように感じる」と話す。