今年に入ってから、米国が中国によるウイグル族らの扱いと、オスマントルコ帝国によるアルメニア人の殺害を「ジェノサイド」と表現した。「集団殺害」と訳されることが多い、極めて強い表現だけに、ニュースとなった。場合によって微妙に異なる使い方がされているジェノサイドはどのような状況を示すのか。
米側が初めて、中国をめぐってジェノサイドという表現を用いたのは、トランプ政権が終わろうとしていた1月19日。ポンペオ国務長官(当時)が、新疆ウイグル自治区のウイグル族などについて、中国が恣意(しい)的に拘束し、強制労働をさせているほか、強制的な不妊手術を行うなど「人道に対する罪」を行っているとしたうえで、「中国がウイグル族らに対して、ジェノサイドを行ってきたと認定した」とした。
当初は、政権が交代すれば表現が変わる可能性もあるとみられていた。しかし、バイデン政権のブリンケン国務長官は、就任に向けた公聴会で「私も同じ判断だ」と答弁。国務省が3月末に公表した、世界の人権状況をまとめた恒例の報告書でも「新疆でウイグル族や、その他の民族的、宗教的マイノリティーに対するジェノサイドや人道に対する罪が起きた」と明記した。
4月には、オスマントルコ帝国によるアルメニア人殺害をめぐり、今度はバイデン大統領が「ジェノサイド」と表現をした。オスマン帝国は末期の1915~23年、150万人のアルメニア人を殺害したとされる。トルコは殺害があったことは認めつつ、規模や意図をめぐって反論し、ジェノサイドという評価に強く反発してきた。米国内ではアルメニア出身者らを中心に「ジェノサイドと呼ぶべきだ」という運動が長く続き、米議会は2019年にそのような決議案を可決。「ジェノサイドとして認める」という選挙公約を掲げてきたバイデン氏も、4月24日の声明でそのように位置づけた。
約100年前に起きた事象について、どのように表現するかが政治的なイシューとなるのは、「ジェノサイド」がそれだけインパクトの強い言葉だからだ。
ジェノサイド(Genoci…
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