第4回「ロシアは80%、米国ゼロ」 核兵器近代化のジレンマ

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米モンタナ州グレートフォールズ=渡辺丘
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米国核戦力 現場から④
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連載「米国核戦力 現場から」

米国の核戦力の現状を、最前線の取材で伝える連載です。4回目は、世界で強まる核軍縮への動きと、中ロに対抗するために必要な核兵器の近代化というジレンマについて伝えています。

 核政策をめぐり、米国は相反するように見える二つの課題に直面している。核兵器を削減する「核軍縮」と最新型に更新する「近代化」という課題だ。

 記者が訪れたモンタナ州の地方都市グレートフォールズは、核の近代化計画による「特需」への期待が高まっていた。

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マルムストローム空軍基地

 市内には、大陸弾道ミサイル(ICBM)を運用する米空軍マルムストローム基地がある。これといった基幹産業はなく、地元経済の3分の1を軍関係の発注や兵士らの消費などに依存する。6万人弱の人口のうち、基地従業員が約4千人を占め、国防総省の手厚い補助金が都市開発に役立てられている。

 新型ICBMを受注する軍事企業ノースロップ・グラマン(NG)の担当者がこの街を何度も訪れ、経済効果を説明した。

 NG社のキャシー・ウォーデン最高経営責任者(CEO)は2月、米シンクタンク主催のオンラインイベントで「ICBMは過去50年も配備されてきたが、近代化は次の50年に必要な能力を提供する。今、既に複数の国が保有する核兵器を米国が除去することは短期的な目標に合致しない」と売り込みに余念がない。

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モンタナ州グレートフォールズ市のボブ・ケリー市長。大陸間弾道ミサイル(ICBM)の基地は「地元でいつの時代も歓迎されてきた」と語った=2021年2月17日、渡辺丘撮影

 ボブ・ケリー市長に話を聞こうとアポを入れると、地元商工会議所の会議室を指定された。商工関係者や軍の支援団体幹部らが同席した。市長は「核兵器の近代化に伴い、さまざまな施設建設などがおこなわれ、地元にとって大きな利益になる。ICBMの基地はいつの時代も、この街で歓迎されてきた」と語った。ICBMの米軍部隊は地元経済と強く結びついていた。

 地元には核反対派の市民もいる。ルクレーシャ・ハンフリーさん(72)は自宅を訪れた私に無数のICBM発射施設を示した地元の地図を見せ、「米国も世界もいつまでも核兵器に依存するのか」と憤った。広島に原爆が投下された8月6日に核兵器廃絶を求めるデモを仲間十数人と基地の前で10年ほど続けたこともある。だが、この街ではごく例外的な存在のままだ。

 ICBMが配備されているモンタナなど地元の州選出の連邦議員らは超党派で「ICBM連合」を結成して、ICBMを1発も減らさずに近代化を進めるよう圧力をかけている。

 核軍縮について提言する米NGO「憂慮する科学者同盟」の報告書によると、ICBM連合の上院議員8人は2007~18年にNGなどの軍事企業から総額130万ドル(約1億4千万円)超の献金を得ていた。核爆撃機や核搭載の潜水艦が拠点を置く州の議員も同様の利害関係がある。

記事後半では、米国の核兵器近代化が遅れている現状と、中ロとの競合を意識する司令官のインタビュー、バイデン政権が打ち出すであろう核戦略について伝えます。

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