益子焼きと並ぶ名物に 益子町の農業法人が栽培

中村尚徳
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 常夏の土地で育つバナナが、陶芸の里・栃木県益子町で栽培されている。今年初めからは地元の店頭に並び始めた。熱帯果樹の栽培や研究を手がける農業法人「あやね」(益子町)の担当者は「益子焼と肩を並べるような名物にしたい」と張り切っている。

 同町生田目に建つ約660平方メートルの温室。約90株のバナナの木が育てられている。室内は常に20度ほどに保たれ、幅の広い大きな葉で埋まっている。

 青果物開発課係長の一野瀬茜さん(28)は「ひと株に150~200本実ります。市販の輸入品より、もっちりした粘りのある甘さが特徴。糖度は20度ぐらいですね」。

 バナナは赤道近くの熱帯・亜熱帯地域が栽培の適地で、99%以上を輸入に頼っている。だが、岡山市の農業法人が国内でも栽培できる技術を開発。近年では北海道や新潟、秋田県などでも栽培されている。

 益子町では2019年春にバナナ栽培が始まった。町内の土木建設会社の会長が農薬を使わない安全なバナナを取引先に贈りたいと農業法人を設立した。同法人の従業員は岡山市で栽培方法を学び、バナナの苗や土を購入した。その後、栃木県農業大学校卒業の一野瀬さんが入社し、取り組みが本格化した。

 冬場は暖房を24時間動かし続け、ひと冬の灯油代は約700万円かかる。日照量が不足すると糖度を落とすため、太陽の光がよく当たるよう葉を取り除くなど気を配る。水やりも土の温度低下や与えすぎに注意しなければならない。

 一野瀬さんは「花が重さに耐えきれず、地面に落ちないようにすることにも神経を使います。栽培方法が確立しておらず試行錯誤の連続ですが、型にはまらないところが楽しい」。

 1月以降、ほぼひと月に1回、「道の駅ましこ」などに卸した。青い状態で収穫し船に積む輸入バナナと違い、益子産は完熟に近い状態まで育てる。これからも継続した出荷をめざす。

 燃料費がかさむなど課題はあるが、一野瀬さんは「これから販路を広げていきたい。新しい農産物として知ってもらい、ゆくゆくは町の名物にしたい」と話している。(中村尚徳)