繁華街に刃物の男?緊迫した声、110番職人の判断

角拓哉
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 北海道警本部に110番の「職人」がいる。通信指令課の安田敏樹警部(57)だ。110番の内容から、現場へ急行する警察官に的確な指示を出す。このほど、長年培った経験を全国の警察官に伝える「警察庁指定広域技能指導官」に選ばれた。

 通信指令の仕事は、110番通報を受け、事件事故の現場に警察官を向かわせる。犯人が逃げているときに、警察官を必要な範囲に出動させる「緊急配備」を指示することもある。このため、捜査の行方を左右する「初動の司令塔」といわれる。

 パトロールなどを担う地域警察官の道を歩んできた安田さんは2002年、初めて通信指令課に配属された。08年6月には東京・秋葉原で通行人が男に無差別に襲われ、死傷する事件が起きていた。

 09年4月、通信指令の重要性を強く感じる事件を経験した。「刃物のようなものを持った男を繁華街で見た」。昼前、そんな通報を受けた。通報者の説明は具体的で、声色からも緊迫した状況が伝わってきた。

 警察官を大量投入し、商業施設内にいた男が発見された。包丁を隠し持っていたため、銃刀法違反容疑で逮捕した。男は「むしゃくしゃしていた。誰か刺してもいいと思っていた」と供述したという。

 安田さんは「犠牲者を出さなかったことが一番。通信指令は、被害を最小限に食い止められる職務だと思った」と振り返る。

 技能指導官として伝えたいのは、技術ばかりではない。「凶器を持った犯人が暴れることもある。現場に向かう警察官に指示を出すときは『気をつけて』と、一声かけ落ち着かせることも大切。市民だけでなく、警察官を守るのも我々の仕事だから」

北海道警が昨年1年間に受けた110番通報は、31万7318件。平均で1分40秒に1件かかってきた計算だ。

 通信指令課によると、最も多いのは交通事故など交通関係で約32%。緊急性の低い要望や苦情なども約27%あった。なかには「緊急事態宣言が発令されたが、会社に行ってもいいか」「携帯電話の操作がわからない」「夫がパチンコに行って困っているので相談したい」といった内容も。同課の原田久雄次席は「急を要さない警察への相談は、24時間対応の『警察相談専用電話』(#9110)を使ってほしい」と呼びかけている。(角拓哉)

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〈広域技能指導官〉専門的な知識や技能の伝承を目的に、警察庁が1994年に創設した。都道府県の枠組みにとらわれず、全国の警察職員を指導する。広域技能指導官は203人(4月12日現在)。通信指令分野では安田さんを含め7人。