第1回危機の大阪、夜を駆ける往診医 自宅療養1万人超の衝撃
記者が見た 夜通しの往診6時間
新型コロナウイルス患者の自宅に防護服を着て入り、酸素吸入や薬の処方にあたる。症状の急変に直面し、深夜に入院調整に追われることもある。自宅療養者の命を守るのは夜間往診の医師らだ。感染が拡大し、入院先がなかなか見つからない大阪府では、自宅にとどまらざるを得ない患者が1万人以上いる。崩壊が忍び寄る医療を、現場で懸命に支える往診医に同行取材した。
「38度台の熱。既往に糖尿病と高血圧。はい、わかりました」
5月中旬、雨の降るある夜、府内を走る車の中で内科医の利根川玲奈(れいな)さん(34)の携帯電話に看護師から連絡が入った。新型コロナで自宅療養をしている60代男性宅への往診の依頼だ。
依頼したのは、大阪府から自宅療養者の支援を委託されている医療サービス企業「ファストドクター」(本社・東京)だ。
保健所を通じて、病状の変化や不安を感じた自宅療養者から同社のコールセンターに相談が寄せられ、緊急性が高いと判断された患者宅には、連絡を受けて医師や看護師が駆けつける。利根川さんもその1人だ。
利根川さんの携帯に送信されてきた男性の問診記録には、肺の機能を示す「血中酸素飽和度」が朝から下がり続け、80%台前半しかないと記されていた。正常な酸素飽和度は96%以上とされる。
「酸素飽和度が低い。急ぎましょう」
自宅療養者の命を守る往診医、逼迫する保健所。そして入院先が見つからない人々。医療崩壊の危機にある大阪のいまを、全5回でお伝えします。
■酸素飽和度 鳴り響く警報音…