正倉院宝物の布、実は別の文様染め?国内初確認の技法か

渡辺元史
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 奈良県正倉院宝物の「茶地花樹鳳凰文﨟纈●(「糸」偏に「毎」の上の部分に「也」)(ちゃじかじゅほうおうもんろうけちのあしぎぬ)」は、茶色の布に鳳凰や花樹の文様が描かれている布だ。名称にある「﨟纈」とはロウを塗った部分を防染するロウケツ染めを指す。だが宮内庁正倉院事務所(奈良市)の調査で、別の文様染めの技法だった可能性が高まっている。

 事務所が正倉院紀要第43号で4月に発表した。

 茶地花樹鳳凰文﨟纈●(「糸」偏に「毎」の上の部分に「也」)は縦約31センチ、横約42センチの絹織物奈良時代の作と考えられる。江戸時代、びょうぶに仕立てるために四角く切られており、本来の形はとどめていない。正倉院にはほかにこの宝物に関連するとされる同じ文様の布の断片3点が伝わっており、もともと1枚の布だったとみられる。

 茶地花樹鳳凰文﨟纈●(「糸」偏に「毎」の上の部分に「也」)の鳳凰や花樹の文様は、布にあらかじめ溶かしたロウで描かれ、染料をはじいて染め抜く技法だと考えられてきた。一方、ロウケツ染めの宝物と比較すると、文様の線が細く、なめらかでないなど相違点もあった。

 今回、顕微鏡で茶地花樹鳳凰文﨟纈●(「糸」偏に「毎」の上の部分に「也」)を調べた結果、文様以外は手触りが硬く、糸束の密着が確認された。文様部分は光沢や繊維のほぐれがみられ、絹繊維の表面を覆うたんぱく質が取り除かれた際に表れる特徴が確認できたという。

 一般的にロウケツ染めで描かれた場合、文様部分とそれ以外とで糸に変化はみられない。このことから茶地花樹鳳凰文﨟纈●(「糸」偏に「毎」の上の部分に「也」)の文様はアルカリ性の物質によって防染、あるいは全体を染めた後に文様部分のみを脱色する抜染の技法が用いられた可能性がある。

 技法の共通点は中国・新疆ウイグル自治区のアスターナ古墳群から出土した唐の時代の染織品にみられる。これまで奈良時代の文様染めは、ロウケツ染めや板締め染め、絞り染めが明らかにされていたが、茶地花樹鳳凰文﨟纈●(「糸」偏に「毎」の上の部分に「也」)は国内で未確認だった技法の可能性があるという。

 正倉院事務所保存課整理室員の片岡真純さんは「染色技法の確定はできないが、国内で初めて確認された技法の可能性はある。古代の文様染めの多様性を示している」と話した。

 正倉院紀要第43号は正倉院事務所のホームページ(https://shosoin.kunaicho.go.jp/別ウインドウで開きます)で閲覧できる。(渡辺元史)