白鵬に立ちはだかる「一代年寄」廃止論 落としどころは

竹園隆浩
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 持病の右ひざの手術を受けて大相撲夏場所(東京・国技館)を休場している横綱白鵬。7月の名古屋場所に進退をかける意向を表明しているが、現役生活が終わりに近づいているのは明らかだ。

 本人は引退後、角界に残り、部屋を経営する未来像を描く。日本国籍も取得して年寄名跡取得に支障はないが、注目は「一代年寄」になれるか、どうか。

 一代年寄は、功績のある横綱に対して本人一代に限って、しこ名を年寄名跡として認めるもの。白鵬が一代年寄になれば、白鵬親方として「白鵬部屋」を運営できる。歴代最多優勝44度のしこ名を、弟子を集める際などに最大限生かせる。

 現在の制度となってからは、優勝32度の大鵬から24度の北の湖、22度の貴乃花の計3人が名乗った。31度の千代の富士は「九重部屋を継ぎたい」と辞退。襲名の目安は優勝20度以上と見られている。

 ところが、日本相撲協会が新しい時代に対応した相撲道のあり方を諮問した「大相撲の継承発展を考える有識者会議」は4月、提言書でいきなり「一代年寄廃止論」を打ち出した。理由は「協会の定款などにも根拠となる規定はない」などとしている。

 長年続いてきた制度に対し、このタイミングでの提言。白鵬の襲名を認めたくないからではないか、と勘ぐってしまう。

 なぜなら、角界内には白鵬の一代年寄襲名に批判的な意見が多い。「年寄名跡取得の条件である日本国籍を取っても、『じゃあ、一代年寄を』とはならないよ。(協会が望む伝統的な横綱像とは違う)あの言動だからね」とある親方。

 成績的には文句のつけようがない。もし一代年寄の制度があるのに襲名を認めないとなると、「『外国出身者だからだろう』と協会への風当たりは間違いなくひどくなる。頭が痛い」という声を何度も聞いた。

 背景には、角界が味わった苦い思いがある。貴乃花親方の件だ。

 絶大な人気を誇った親方は、同じ一代年寄だった北の湖前理事長に可愛がられた。北の湖理事長が亡くなると理事長職に固執し、協会幹部と対立した。

 「大横綱だけに認められる特別意識があると、将来、白鵬貴乃花親方と同じような行動を起こすのではないか」。そんな不安を抱える関係者は、制度の廃止を望んでいた。

 横綱は引退後5年間、現役名で親方を務められる。ただ、6年目以降は他の名跡に変えなければ、退職しか道はない。

 一代年寄の制度がなくなると、「白鵬親方」は5年間しか存在できなくなり、その名跡のままでは部屋も持てない。これだけの大横綱の名が消えてしまうことを、本人も世論も簡単には納得できないだろう。

 そこで有識者会議は一つの案をひねり出した。しこ名のついた「道場」の看板を与える、というものだ。

 提言書にはこう記されている。

 「協会が功績の顕彰を必要と考える横綱に対しては、何らかの形で功労をたたえる可能性は排除されない。例えば、かつての双葉山のように、年寄名跡を継承する一方、横綱時のしこ名を『道場』に冠して看板を並んで掲げさせ、その使用を認めるなどの工夫も考えられる」

 不滅の69連勝を達成した双葉山が現役でありながら部屋を起こした際、しこ名のついた「双葉山道場」の看板を掲げることが認められた。引退後には時津風親方となって時津風部屋を運営したが、「双葉山」のしこ名を残した看板は、「時津風部屋」の看板とともに残った。

 「道場」が認められれば、白鵬が一代年寄になれなくても「白鵬」の名前を残すことができる。双葉山と並ぶ形として協会が顕彰するなら、一つの「落としどころ」にはなるかも知れない。

 そう遠くない時期に、協会は「一代年寄」について結論を出すことになる。(竹園隆浩)