第9回日朝交渉、安倍政権ゆえのジレンマ 「拉致解決」の重圧

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 北朝鮮による拉致問題は、政権復帰した安倍首相が当初から取り組んだ最重要課題だった。2014年には「安倍政権で最も日朝が接近した」という場面が訪れる。

「未完の最長政権」第3部第9回

 安倍晋三は首相に返り咲いた2日後の2012年12月28日、北朝鮮による拉致被害者家族会メンバーらと首相官邸で向き合い、こう誓った。「もう一度首相に就いたのも、何とか拉致問題を解決しなければ、との使命感からだ。必ず安倍内閣で解決する」

 多くの国会議員がまだ関心を寄せていなかった時期から、安倍は拉致問題に注力した。官房副長官時代の02年9月、首相の小泉純一郎に同行し、一時帰国した拉致被害者5人を北朝鮮に引き渡さないよう強く主張。「北朝鮮への強い姿勢が安倍の政治家としての原動力になった」と周辺は語る。

 安倍は政権復帰を果たすとすぐに日朝交渉の働きかけを外務省に指示。この成果は早速、14年に「安倍政権で最も日朝が接近した」(閣僚経験者)二つの大きな動きとなって表れた。

 同年3月、拉致被害者横田めぐみさんの両親、滋さんと早紀江さんと、めぐみさんの娘キム・ウンギョン(ヘギョン)さんの面会がモンゴル・ウランバートルで実現。外務次官・斎木昭隆の「成功すれば、拉致問題解決に向けた本格交渉の再開につながる」との提案に、安倍がゴーサインを出した極秘交渉だった。

 さらに同年5月には日朝実務者がスウェーデンでの政府間協議を経て「ストックホルム合意」を結んだ。北朝鮮拉致被害者の再調査を約束し、日本は北朝鮮が調査を開始した時点で日本独自の制裁措置を緩和すると伝えた。

【プレミアムA】 未完の最長政権 第3部

「外交の安倍」。2012年に首相の座に返り咲いた安倍晋三前首相はそう呼ばれた。「地球儀を俯瞰(ふかん)する外交」を掲げ、訪問国は80カ国を数える。「未完の最長政権」第3部では、安倍外交の内実を検証する。

 北朝鮮の出方に懐疑的だった元拉致問題担当相の古屋圭司は当時、盟友の安倍から「これはチャレンジだ」と言われ、家族会を説得したと打ち明ける。

 北朝鮮拉致被害者らを再調査する「特別調査委員会」を立ち上げ、当時第1書記の金正恩(キムジョンウン)から対日交渉を任されていた北朝鮮の秘密警察にあたる保衛部の幹部が委員長に就任。安倍も「北朝鮮の本気度」に期待を寄せた。

 だが、北朝鮮側の回答は、安…

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