あなたに生きてほしかった ビオラ奏者が音にこめた思い

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根岸拓朗
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 ホテルの部屋のカーテンを開けて朝日を浴び、コーヒーを飲んだ後。ビオラ奏者の叶澤尚子(かのうざわなおこ)さん(34)は、楽器の一番低い「ド」の音から弾き始めた。レ、ミ、ファ、ソ、ラ、シ、ド……。いつもの響きを確かめた。

 4月中旬。叶澤さんは弦楽四重奏の演奏会を控え、関西のあるターミナル駅の近くで泊まっていた。

 窓から斜め下に視線をやると、マンションのひさしの上で、Tシャツ姿の男性が横になっているのが見えた。「ひなたぼっこしてるのかな」と思った。

 数分たった。

 叶澤さんは背伸びをして再び見た。うつぶせのまま少しも動いていない。近くの歩道で掃き掃除をする人、足早に歩く人。だれも気づいた人はいないようだった。

 フロントに電話をかけた。「たぶん人が死んでるんですけど」。

 担当者をマンションに案内し…

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