あの名勝負師、今は「見習い」に ゼロから狙う二つの夢

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有吉正徳
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 勝負師としての生き方に別れを告げ、色違いのスーツを3着新調した。オーダーメイドだ。

 蛯名正義、52歳。日本中央競馬会(JRA)で歴代4位の2541勝を挙げた名騎手が、今年2月に引退した。

 「このスーツが、いつまでも着られるよう、今の体形を維持したいからね」。身長162センチ、体重52キロ。若手のときとスタイルは変わらず、体力的には、まだまだ騎手を続けることはできた。だが、第2の競馬人生に挑戦するタイミングが来た、と決断した。

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 昨年末、3度目の受験で、合格率5・2%だった超難関の調教師免許に合格。この34年間、1着になることだけに人生を捧げてきたが、今度はサラブレッドを育て、大きなレースを制してみたいという思いを持つ。いくつになっても、この人を動かすのはチャレンジ精神だ。

 1987年、17歳でプロデビュー。競馬学校の同期の武豊(52)が瞬く間にスターダムにのし上がるなか、地道に腕を磨いた。

 最高峰のGⅠレースはJRA歴代6位タイの26勝を挙げた。勝負に対する執念にあふれた騎乗が持ち味で、中でも2010年の戦いは象徴的だった。1着同着という際どいレースを含め、桜花賞、オークス、秋華賞を制し、アパパネを史上3頭目の牝馬(ひんば)3冠馬に仕立てた。

 30歳ごろから、専門家と二人三脚でデータを集め、騎手という特殊なアスリートに必要な体の手入れに取り組んできた。40歳を過ぎて騎乗フォームを変えたこともある。プロ野球の首位打者が打撃フォームを変えるようなものだが、「馬の走るフォームを起き上がらせるためだった」。貫き通したチャレンジ精神の背景にあったのは、「一つでも多く勝ちたい」という気持ちだった。

 その彼は今、「技術調教師」…

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