県庁担当課、草抜きに大忙し 屈んだ職員が抜いたのは…

松岡大将
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 佐賀県庁のある課が繁忙期を迎えている。仕事内容は「草抜き」だ。何のためなのか。仕事に同行した。

 4月27日の昼間、佐賀市を流れる嘉瀬川の河川敷に1台の県の車が止まった。作業着姿の男性職員2人が降り、生える植物に視線を落として歩き始めた。10分ほどたったころ、ある種類の植物を見つけると、かがみ、ポリ袋を片手に抜き始めた。30分でひと袋がいっぱいになった。

薄紫のきれいな花、九州では1カ月早くシーズン

 2人は県薬務課の麻薬・毒劇物担当係。抜いたのは花びらが4枚あって、高さ約1メートルの「アツミゲシ」。麻薬の原料となる「ケシ」の一種。あへん法では、無許可での栽培が禁じられる植物だ。

 県によると、ポピーに似た薄紫のきれいな花が咲き、ギザギザの形をした葉が茎を巻き込むようにつくのが特徴だ。繁殖力が強く、空き地や道ばたに生えたり、知らずに持ち帰って栽培されたりすることがある。撤去数は、今年度だけで1万本を超えた。

 厚生労働省は、毎年開花シーズンの5、6月に見分け方を書いたポスターをつくり、通報を求めるなどの撲滅運動をするが、九州ではシーズンが1カ月早い。

 県薬務課の仕事はふだん、毒劇物を取り扱う人への資格試験の実施などだ。この時期、住民から通報があった場所や、前年に生えていた場所を15人の職員が手分けして週2回ほど回り、撤去に励む。

 撤去にはスピードも重要だ。いったん花が咲くと他の植物と見分けづらくなるうえ、花が散って果実になると多くの種子が飛び散り、翌年再び生えるからだ。生息場所が広範囲の場合、撤去に2日ほどかかることもあるという。

 麻薬・毒劇物担当係長の三宅秀明さん(39)は「この時期は忙しい」と話す。違法な栽培を見つけ、指摘すると、「近所の人から『どうぞ』とお裾分けでもらった」「きれいなのでそのまま育てた」と麻薬の原料になることを知らない人が多かったという。

 三宅さんはこれまで保健所などで働いたが、3年前に今の係に赴任した。先輩から無許可での栽培が禁じられた植物の特徴を聞き、写真を見て見分ける力を培った。今では週末に家族と出かけたとき、似た植物を見かけるとつい立ち止まってしまう。「職業病ですね」と笑う三宅さん。袋がいっぱいになるほど撤去できたときは、達成感があるという。

 「見分けにくいので、迷ったら通報してください」。三宅さんは、生えていそうな場所にシールを貼った地図を手に、今日も県内を駆け回る。通報は、最寄りの保健所か県薬務課(0952・25・7082)へ。(松岡大将)