プーチン強権のロシア 平和賞サハロフ氏の展示許さず

モスクワ=喜田尚
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 21日に生誕100年を迎える旧ソ連の反体制派物理学者アンドレイ・サハロフ氏をめぐって、モスクワ市が同氏のメッセージを伝える野外展示会の開催許可を取り消したことが分かった。展示会を企画したNGO「サハロフセンター」が明らかにした。

 サハロフ氏は旧ソ連で最も知られた反体制派知識人の1人。ソ連の核兵器開発にかかわりながらその後民主化、人権擁護を訴えた。1975年にノーベル平和賞を受賞。ソ連は授賞式出席を許さず、80年から同氏を国内流刑にした。約7年後に改革路線「ペレストロイカ」を進めるゴルバチョフ書記長下で解除され、その後も心臓マヒで亡くなる89年まで活発な発言を続けた。

 同氏の功績と理念を顕彰するサハロフセンターは生誕100年にあわせ、17日から散歩場所として市民に親しまれるモスクワ市内の並木通りを会場に、写真と同氏の発言や論文からの引用による野外展示会を計画。モスクワ市は3月に設備の利用を認めたが、センターが展示内容を伝えたところ、4月30日に「内容に同意できない」と口頭で告げられたという。

 センターは理由の開示を求めたが、現在も返答は得られていないという。17日に声明を出し「根拠がなく、恥ずべき決定だ」とし市側の対応を批判した。野外展が予定された場所では現在、プーチン政権が力を入れる第2次世界大戦の対独戦勝をたたえる写真、絵画展が行われている。

 ロシアではプーチン政権が強権体制を強め、人権団体や独立系メディアに対する締め付けが進む。サハロフ氏が晩年設立に尽力した人権団体「メモリアル」も2016年法務省に「外国の代理人」に指定され、活動を制限されている。

 ロシア大統領府のペスコフ報道官は20日、野外展示会の許可取り消しについて「完全に市の判断だ」と述べ政権の関与を否定した。

 サハロフ氏の生誕100年ではロシア各地で展示会やシンポジウムが行われ、国外でもドイツのケルン、ベルリンなどで展覧会が予定されている。(モスクワ=喜田尚)