「5月のそよ風をゼリーにして」 今村遼佑のアートと光

田中ゑれ奈
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 「五月のそよ風をゼリーにして持つて来て下さい」。京都市左京区のフィンチアーツで開催中の現代美術家・今村遼佑(りょうすけ)の個展「永くて遠い、瞬きする間」は、早世の詩人・立原道造が病床を見舞う友人に向けて口にしたこんな言葉から着想された。風という見えない空気の動きを固体と液体の間の物質に例えた表現を、作家は作品制作に重ねる。それは、うつろう印象を素材や絵の具に置き換え、捉えようとする営みだ。

 ギャラリーの真ん中にどさりと置かれた木材の束は一見、素材に手を加えない「もの派」の作品のようだ。だが、よく観察すると木肌のところどころに光の粒が落ち、ちらちらと瞬いているのがわかる。

 今村は2019年と20年の5月にそれぞれ、京都・亀岡のアトリエ前の空き地に立つ木の下にセンサーを置き、光の強弱を計測。空き地で拾った廃材にチップLEDを埋め込み、その日・その場所の木漏れ日の揺らぎを再現した。同じ手法で自室のカーテン下の光を測った作品では、カーテンが風で揺れるたびに日なたと日陰が入れ替わり、LEDは一定のリズムを保ってゆっくり明滅を繰り返す。

 ギャラリーの壁には「5月の印象」を描いたという、質感の異なる2種類の絵画シリーズが点在している。一方は、通常は紙に描くときに使う透明水彩絵の具をカンバスに載せた「ゼリー」。絵の具は定着せずはじかれ、その上から透明の素材を塗ることで絵筆の跡が残る。

 もう一方は、カンバスにアクリル絵の具を染みこませてぼかし、マットに仕上げた「羊羹(ようかん)」。ゼラチンと寒天、果汁と小豆の対比は、画材の性質に左右される絵画制作の比喩表現でもある。

 6月6日までの金土日。フィンチアーツ(https://www.finch.link/別ウインドウで開きます)。(田中ゑれ奈)