第10回ナウシカまとう青き衣に聖母を見た ベルギー出身研究者

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太田啓之
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コロナ下で読み解く 風の谷のナウシカ
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 宮崎駿監督の傑作漫画『風の谷のナウシカ』を入り口としつつ、閉塞(へいそく)的な現代の状況を切り開く鍵を考える連載。今回はベルギー出身で、日本の漫画文化を研究する杉本バウエンス・ジェシカ龍谷大准教授に、『ナウシカ』とさまざまな伝説や神話、特にキリスト教との関わりについて考えていただきました。ナウシカが青い服を着ている意味は? 映画『エイリアン』シリーズとの共通点とは? 目からうろこが落ちる指摘が満載です!

 ――杉本さんは、漫画版『ナウシカ』がまだ雑誌『アニメージュ』に連載されていた頃に読み始めたそうですね。

 「『ナウシカ』との出会いは、ベルギーの大学に通っていた93年初め、20歳の時です。当時、漫画好きの友達はほとんどが男性で『ドラゴンボール』や『聖闘士星矢(セイントセイヤ)』など戦いが中心のファンタジーが人気を集めていました。現実との接点が少ないそれらの作品と比べ、『ナウシカ』は異質でした」

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杉本さんが初めて手にした、米国版の漫画『風の谷のナウシカ』(C)Studio Ghibli

 「私の子ども時代には冷戦がまだ続いていて、『自分の住む場所にも核爆弾が落とされるかも』という恐怖感の中で育ちました。91年にソ連は崩壊しましたが、『この現実を何とかしなくては』という思いは強かった。『ナウシカ』という作品からも、現実に対する作者の危機感が伝わってきました」

 「宮崎駿監督は現実の矛盾や残酷さから逃げないし、非常に深く考えている。トルメキア王国と土鬼(ドルク)帝国の戦争では、軍人だけではなく多くの子どもたちが亡くなり、支配者の肉親同士は殺し合い、大規模な環境破壊も起きてしまう。楽観的な見通しや展開をすべて排除した上で、それでも未来への可能性を見いだそうとする宮崎監督の思いにうたれました。あれから30年近く経ちましたが、『ナウシカ』の現代性はいささかも失われていません」

娘を「ナウシカ」と名付けたフランスの大御所漫画家

 ――フランスベルギーにおける漫画『ナウシカ』の評価はどうでしょうか。

 「フランスベルギーでも宮…

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