哺乳類の手足に水かきがない訳 「なぜ」突き詰め、解明

神宮司実玲
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猿橋賞を受賞した東工大教授 田中幹子さん

 哺乳類の多くの手足には水かきがない。指の間の細胞が失われる「細胞死」が起きるからだ。東工大教授の田中幹子さん(50)は、大気中の酸素が「細胞死」を導くことを明らかにして、優れた女性科学者に贈られる猿橋賞を受賞した。生物の進化や発生への関心は、高校生の時、ヒトが母親のおなかで育つ映像を見て生まれた。

 陸上にすむ動物の手足には水かきがない。胎児の時にだけある指の間の細胞が自然に失われるからだ。この「細胞死」を導くのは、呼吸で取り込んだ酸素から生じる、体には有害な活性酸素であることを明らかにし、優れた女性科学者に贈られる猿橋賞を受けた。

 自らについて、「なんでなんでばっかり言ってる子どもが大人になった感じ」と話す。物理学者の父と幼い頃から実験を楽しみ、漠然と科学者になると思っていた。

 自然科学は何でも面白かった。進化発生学に進んだのは、「わからないの極み」だから。高校の生物の授業で、母親のおなかで胎児が育つ映像を見た。受精卵が分裂し、ヒトの形に。なぜだろう。教科書に並ぶ図を見て、メカニズムを知り尽くしたくなった。

 「なぜ」の思いは、ヒトの起源にまでさかのぼる。古代魚のヒレがヒトの手足にまで進化を遂げた過程を、原始的なサメの胚(はい)を用いて遺伝子レベルで探っている。海から陸上に進出した生物は、初めて大気中の酸素にさらされた。手足の発生に活性酸素が欠かせないのは、その名残ではないか。生命現象の根幹である「環境が進化に与えた影響」に迫る研究だ。

 山形で研究者をしている夫(46)とは、共著の論文もある。「すごい面白いこと思いついちゃった」。毎日の電話はいつも、科学の話ばかりだ。(神宮司実玲)