イチローさんのひと言を胸に 智弁和歌山のエースが完封

山口裕起
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 スーパースターの金言を胸に、エースは成長した。

 高校野球の春季近畿大会は22日、滋賀・皇子山球場で1回戦があり、智弁和歌山が1―0で神港学園(兵庫)を下した。最速147キロ右腕の中西聖輝(3年)が散発3安打で完封し、「最後までテンポ良く投げられて、納得の投球ができた」と顔をほころばせた。

 立ち上がりから、気合が入っていた。直球とカーブを低めに集め、時には「おりゃ」と雄たけびをあげながら投げ込む。兵庫県王者から9三振を奪い、三塁を踏ませなかった。三回に犠飛で挙げた1点を守り切り、中谷仁監督も「安心して見ていられた。ナイスピッチング」と目を細めた。

 チームは昨秋、近畿大会準々決勝で敗れ、2017年夏から続く甲子園連続出場(20年春、夏は中止)を逃した。

 「僕がしっかり投げていれば」。責任を感じて落ち込んでいた中西を、奮い立たせてくれた出来事があった。

 12月、プロ野球のオリックス大リーグのマリナーズなどで活躍し、2019年に現役を引退したイチローさんが「臨時コーチ」として指導してくれた。

 けがをしていた中西は、別メニューでリハビリしていたため、直接、指導は受けられなかった。でも、遠くからでもイチローさんの打撃やダッシュする姿を見て「すべての動きに感動した」という。

 そして、3日間の指導の最後に、全員を集めて言ったイチローさんの言葉が忘れられない。

 「ちゃんとやってよ」

 自分だけに言われた言葉でもない。それもたった一言だったが、中西の胸にずしりと響いた。冬場の走り込みや筋トレ。つらくなるたびに、その言葉を思い出した。「ちゃんとやらなきゃ、と何度も自分に言い聞かせました」

 一冬を越え、確かな成長を感じる。9日にあった県大会決勝は、今春の選抜大会に出場した市和歌山相手に完投し、7―1で勝利。最速を2キロ更新し、昨年の新チーム発足後、4回目となるライバル対決を初めて制した。

 そして、この日の圧巻の投球だ。中西は言う。「智弁和歌山のエースとして、誇りを持ってマウンドに立っている。あの言葉で精神的に強くなれた」。29日の準決勝の相手は、春夏8度の甲子園優勝を誇る大阪桐蔭。真っ向勝負で挑む。(山口裕起)