歴史103年の名物コロッケ 売り上げは年4万個以上

浜田奈美
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看板商品のコロッケ。年4万3千個を売り上げる=福島智哉さん提供
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 103年間、コロッケの味を受け継いできた精肉店が秋田県男鹿市の港町にある。同市船川港の「グルメストアフクシマ」。4代目の福島智哉さん(38)は、コロナ禍にも負けず、家族や仲間と力を合わせながら店の歴史を重ねている。

 今年の大型連休、車がひっきりなしに訪れる店頭で、智哉さんは「雪が解けると、やっぱりコロッケなんだな」と感じていた。雪に閉ざされる冬の間は、生活必需品を求める地元客が中心だが、車で自由に動ける春になると、遠方からの客が増える。お目当てはコロッケだ。

 フクシマは1918年、智哉さんの曽祖父の故・秋太郎(あきたろう)さんが東京都内で創業した。秋太郎さんは、当時から手作りコロッケを店の目玉商品として売り、39年に妻の故郷の男鹿に移住してからも、コロッケは店の顔であり続けた。

 いま、3代目の父・基秋(もとあき)さん(65)と共に店を守る智哉さんは、東京の大学に進み、外食産業の会社に就職した。20代は東京で経験を積むつもりでいたが、数字偏重主義の社風に違和感を覚え、2年で退社。失意と共に帰郷した。

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初代の秋太郎さんが、いまの東京都品川区小山で創業した当時の様子=福島智哉さん提供

 実家に戻ると、父はお弁当や総菜などの加工品にも力を入れ、新たな客を増やしていた。智哉さんは「歴史あるコロッケを軸に、店の知名度をあげたい」と思いを伝え、素材のことから父と議論を重ねた。

 「この土地のもの、自然なものを」と、肉は秋田錦牛、塩は天然塩を使い、ジャガイモやタマネギも、農家の協力を得て徐々に完全無農薬に切り替えた。約5年間、父子で試行錯誤を重ねた。

 帰郷後から地道に続けたSNSでの発信も奏功し、「グルメストアフクシマのコロッケ」は自然志向の消費者や観光客の間で有名に。1個230円と少し高めだが、年4万個以上を売り上げる。智哉さんは、売り上げ以上に「先祖から受け継いだものを伝えたい」との思いが強いという。

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創業100年を記念して家族と。前列中央が福島智哉さん=本人提供

 数年前から、地元の気の合う商店主と3人で、町の活性化にも取り組み始めた。昨年6月にはJR男鹿駅近くの空きビルにイベントも開けるカフェ「TOMOSU CAFE」をオープン。「明かりをともすように、日常にワクワク感が加わる場に」との思いを込めた。

 歴史が自分に託される重みは常に感じる。だが智哉さんはこう思うという。「自分らしく楽しく生きていれば、町も店も、おのずと楽しい場所になる」(浜田奈美)