諏訪のお殿様が活躍 頼重の少年漫画が人気

依光隆明
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 鎌倉から南北朝期に実在した長野県諏訪のお殿様が活躍する少年漫画が人気となっている。主なキャラクターとして登場するのは、滅亡した鎌倉幕府の後継者・北条時行を守り戦う諏訪頼重。「暗殺教室」で知られる人気漫画家の松井優征さんが、歴史で語られることの少ないマイナーな主従に光を当てた。

 1月から週刊少年ジャンプに連載中の「逃げ上手の若君」。鎌倉幕府滅亡のシーンからスタートし、逃げ延びた北条時行を描く。

 時行を守り育てる重要なキャラクターが、神職を務めながら諏訪地方を治めていた諏訪頼重。ときに神力を使い、ときにコミカルな笑いをとりながら時行を武将に育てていく。時行と並んで人気も上昇中だ。

 諏訪の歴史に詳しい諏訪市の八剱神社宮司、宮坂清さんによると、実在した頼重家は、作品で描かれる鎌倉末期前後の頃、「大祝(おおほおり)」を担っていた。

 「建御名方(たけみなかた)神の子孫であり、生き神様のことです。8歳で大祝に即位し、15歳で下りて武士になります。大祝は諏訪を出てはならず、武士になってから鎌倉で活躍しました」

 頼重も少年期に大祝を務め、武士となったあとに時行を助けた。歴史的には時行、頼重は1335(建武2)年に建武新政権の足利直義を破って鎌倉を一時的に奪還した。「中先代の乱」と呼ばれる。

 挙兵前に時行は信濃国に隠れ住んだといわれ、諏訪文化社刊の「諏訪明神」(竹村美幸著)は、八ケ岳山麓(さんろく)の雀ケ森▽杖突峠南の山中▽上伊那や下伊那の各地(伊那市高遠町藤沢の『権殿屋敷』や同市富県の『北条屋敷』など)を、その場所として挙げる。「下伊那郡大河原村(現大鹿村)桶谷には北条時行(亀寿丸)の墓と伝えられるところがあるから、ここにも亀寿丸が住んでいたことがうかがえる」とも記している。

 「逃げ上手の若君」が、今後どう展開するかは分からない。漫画では、時行は天才的な逃げ上手、頼重は未来がほの見える参謀役という設定。南北朝初期というスポットライトの当たることが少ない時代に材を取り、松井さんが思い切り想像を膨らませて物語を展開している。

 連載に当たって松井さんは諏訪を訪れ、地元の人の案内で史跡などを観察、調査した。それを踏まえ、物語には諏訪独特の風習も取り込んでいる。

 毎回、末尾の1ページに東京大学史料編纂(へんさん)所教授の本郷和人さんが解説を書いている。(依光隆明)

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 松井優征さんの話 諏訪には何度か取材で行きましたが、諏訪大社を中心とした独特の文化、価値観が根付いているのを感じます。諏訪から始まり天下を震撼(しんかん)させた大戦、中先代の乱を通して古代から受け継がれる諏訪・信濃の人々の旺盛な独立心、気概、誇りを描ければと思います。まだまだ勉強途上ではありますが手に取って頂ければ幸いです。

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 歴史上、「諏訪頼重」は2人いる。1人は「逃げ上手の若君」に登場する14世紀前半の頼重。もう1人の頼重は16世紀前半の戦国期に武将として活躍、武田信玄に敗北した。娘は信玄の側室となり、のちの世に諏訪御料人などと呼ばれる。御料人と信玄の間に生まれたのが武田家最後の当主、武田勝頼だった。