コロナでピンチの花火製造所 欧米や中東への輸出に商機

新型コロナウイルス

谷口哲雄
[PR]

 夜空を彩る夏の風物詩、打ち上げ花火は一つ一つ手作業で作られる。紙製の球形の容器に、光を出す「星」と、球を破裂させる「割薬(わりやく)」という2種類の火薬を詰めていく。丁寧さと根気がいる仕事だ。

 茨城県つくば市南部にある山崎煙火製造所では、11人の花火師を含む約30人が従事する。作業場では2号玉(直径6センチ)から尺玉(同30センチ)まで、さまざまな大きさの花火玉が作られている。尺玉で構造の複雑なものは完成まで半年ほどかかる。

 1903年創業。当初は運動会や祭礼で合図に打ち上げる花火が中心だった。3代目社長だった山崎芳男さん(70)=現会長=のとき、競技会向けの花火製造も始めた。真ん丸の光の輪が三重や四重に開く「多重芯」を得意とし、土浦(茨城県)や大曲(秋田県)などの主要大会で繰り返し入賞してきた。

 4代目の山崎智弘さん(38)は「花火玉の中で星が1ミリずれると、空中で開いたときには1メートル以上のずれにつながる。どんなに丁寧に作っても、最後は打ち上げてみないと分からない。そこが難しくもあり、面白くもある」と話す。

 環境に優しい花火にも取り組む。割薬は、もみ殻などを芯にして作られるが、打ち上げの際に芯が燃え残ることがある。ごみを減らすため、芯のない割薬も使っている。

 海外への販売にも積極的で、ベトナムの協力工場から欧米や中東に輸出している。「鮮やかな色、スッと消える潔さ。日本の花火の魅力を世界に広めたい」と智弘さん。

 コロナ禍には花火業界も大きな影響を受けた。大会は軒並み中止となり、火柱や煙で盛り上げるコンサートやイベントも激減した。ようやく昨年後半から、医療従事者を応援する自治体の花火や、学校のサプライズ花火の仕事がぽつぽつ入るようになった。

 智弘さんは「もともと花火には鎮魂や悪疫退散の意味が込められていた。華やかなショーだけではないことを伝えていきたい」と語る。

 数カ所で催す分散型花火、車中から見るドライブイン花火など、密集を避ける開催方法も探っている。(谷口哲雄)

ピンチはチャンスだ

 花火との出会いは学生時代にさかのぼる。大学の4年間、実家に近い山崎煙火製造所で打ち上げのアルバイトをした。卒業後は香港の部品製造会社で生産管理や輸出に携わり、好況からリーマン・ショックまで激動を体験した。

 「ピンチのとき、他の人と同じことをしていたら流されてしまう。バタバタせず冷静に状況を分析し、事態が落ち着いた後に備えることが大切だと学んだ」

 2015年に帰国し、先代の山崎芳男社長の跡を昨年継いだ。香港での経験を生かし、海外への販売拡大にも熱心に取り組む。

 コロナ禍も転機にしたい。「仕事は減ってしまったが、考える時間は増えた」。単に打ち上げを請け負うだけでなく、花火大会の企画段階から参加し、感染防止策も含めた運営を一緒に考える。そんな「コロナ後」を思い描く。

新型コロナウイルス最新情報

新型コロナウイルス最新情報

最新ニュースや感染状況、地域別ニュース、予防方法などの生活情報はこちらから。[記事一覧へ]