照ノ富士、大関で初V 苦手な決定戦制す 綱とり挑戦へ

波戸健一
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(23日、大相撲夏場所千秋楽)

 優勝決定戦に持ち込まれた照ノ富士に、悪いデータがそろっていた。過去、決定戦は3戦全敗。昨年11月場所は、この日と同じ貴景勝に屈した。現行制度になった1969年名古屋場所以降、大関復帰場所で優勝した力士は出ていない。

 本割は立ち合い直後、貴景勝の突き落としに腹ばいで落ちた。敗北からの孤独な約15分。「やってきたことを信じて、土俵に上がった」。積み上げてきた努力を力に変え、必死に目の前の勝負に集中した。

 いざ決定戦。右からかちあげて相手の出足を止めた。間合いをはかりながら攻め込み、最後は、押し返そうとする貴景勝を力いっぱいはたき込んだ。

 実は場所前から古傷のひざの調子が悪かった。師匠の伊勢ケ浜親方(元横綱旭富士)が「稽古が足りていない」という状態で臨んだ。それでも初日から10連勝。4日目で単独首位に立ち、最後まで場所を引っ張った。

 「平成生まれ初の大関」の照ノ富士。最初の昇進は23歳の時だった。「さらに上をめざして精進いたします」。昇進伝達式で意気揚々と述べたが、一度も賜杯(しはい)を抱けずに序二段まで転落。相撲人生は大きな遠回りを余儀なくされた。

 それだけに29歳の今、焦燥感がある。「いつ、何が起きるかわからない。力が出ているうちに、どこまで通じるか試したい。引退するとき、全てを出し切ったと自分で満足していたい」

 7月の名古屋場所で横綱昇進に挑む。「なりたいからなれるわけじゃない。だからこそ経験して、できたらできたで」と静かな闘志を語った。一人横綱の白鵬が進退をかける場所で、さらなる飛躍をめざす。(波戸健一)

粘った貴景勝、理事長も評価

 貴景勝は3度目の優勝はならず。ただ、14日目にも照ノ富士の優勝が決まりかねない状況のなか、決定戦まで持ち込んだ。八角理事長(元横綱北勝海)は「よく辛抱して一つ一つ勝っていった」と貴景勝を評価。「この2人(照ノ富士貴景勝)が(角界を)引っ張っている気がしますね」と話した。

遠藤あと一歩、11勝に手応え

 遠藤は優勝決定戦に加われなかった。結びの照ノ富士貴景勝戦の直前の取組で、大関正代に押し出され、4敗目を喫した。

 先場所の途中休場で地位を落として臨んだものの、好成績を買われて組まれた貴景勝戦、照ノ富士戦を連勝。賜杯(しはい)レースを千秋楽に持ち込む殊勲の活躍だった。相撲ぶりを評価され、2年ぶり4度目の技能賞に輝いた。

 優勝争いについては「何も意識しなかった」と言ったものの、11勝は2016年秋場所(13勝)以来。「しっかり体と付き合えた」と手応えを口にした。