第3回隠れ家特定も「逃げられた」 幻となったアミールの逮捕

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乗京真知
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実行犯の「遺言」 中村哲さん殺害事件を追う③ デザイン・小倉誼之
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 中村哲さんの殺害事件は、アフガニスタンガニ大統領が監督する最重要事件に指定されている。アフガニスタンで最も捜査力が高い情報機関「国家保安局」が中心となり、犯行グループの洗い出しを進めている。

連載「実行犯の『遺言』 ~中村哲さん殺害事件を追う~」

2019年にアフガニスタンで起きた、医師の中村哲さん殺害事件の全貌に迫る連載です。犯行グループの中心人物と目されるアミールについての断片情報が、徐々に点から線になってきました。連載3回目では、アミールの潜伏先や当局による捜査について取材しています。

 私と助手は、その国家保安局の捜査関係者の男性に取材した。彼は武装勢力の内情に詳しく、事件発生から1年以上たった今年1月の時点でも、犯行グループの中心人物と目される男「ハジ・ドバイ」の動向を追っていた。彼は「ハジ・ドバイ」の素性を、次のように説明した。

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アミールの素顔

・「ハジ・ドバイ」はあだ名で、本名はアミール・ナワズ・メスード

パキスタンの南ワジリスタン地区出身のパキスタン

・過去にはパキスタンの南部カラチなどで誘拐事件を起こした

パキスタン当局の掃討作戦でアフガニスタン側に逃げ、しばらくアフガニスタン南東部ホースト州に潜伏

・その後、アフガニスタン東部クナール州へと移り住んだ

アフガニスタンパキスタン両方の偽造IDを持っている

 これまでの取材で、イスラム武装勢力パキスタンタリバーン運動(TTP)」のメンバー2人が語った内容と一致していた。

 捜査関係者の男性は、アミールの人脈も調べ上げていた。アフガニスタン南部カンダハルが本拠の反政府勢力アフガン・タリバーンの地方幹部や、その関連勢力で米国関連施設にテロを仕掛けてきたパキスタン北西部拠点の武装勢力「ハッカーニ派」の中枢幹部、過激派組織「イスラム国」(IS)の支部組織などの名前を挙げ、こうした組織の汚れ仕事を請け負ってきたのがアミールだと指摘した。

 彼は取材の中で、クナール州で撮影したという数枚の写真を示した。写真には、乾燥した山々に囲まれた小さな農村が写っていた。農村には小麦の段々畑が広がり、その所々に石積みの家が立っていた。大半は窓や玄関が外からのぞける簡素な造りだったが、1カ所、塀で囲われた区画があった。塀の中は見えないが、塀の上には建物の屋根がのぞいていた。

 彼は、その区画を指さしながら、「アミールの隠れ家だ」と言った。昼夜問わず、護衛が見回りをしているため、近づくのは容易でないという。

 隠れ家まで分かっているのか……。私は国家保安局の捜査力に驚きつつ、話を聞くうちに疑問も持った。隠れ家が分かっているのに、なぜ国家保安局はアミールを放っておいたのだろう。

アフガニスタン当局がアミールを野放しにしていた理由とは。捜査関係者が発した返答は思いも寄らないような内容でした。

 彼は、意外な答えを持ってい…

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