走れなかった聖火リレー 57年越し、つなげたトーチ

岡田健
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 兵庫県丹波篠山市で24日、東京五輪聖火リレーの代替行事があり、前回の東京五輪で走者に選ばれながら走れなかった「幻のランナー」が参加した。当時は天候に機会を奪われ、今回も新型コロナウイルスに振り回されたが、57年を経てやっと聖火を掲げることができた。

 篠山城跡三の丸広場に急きょ設けられた1周280メートルのトラック。森純也さん(74)=大阪府池田市=は第1走者として、9人の仲間とともにスタートラインに立った。

 目は走る前から潤んでいた。トーチにともった聖火を見て、達成感で胸がいっぱいだった。「まだ走ってないのに、やっと終わったと思っていた」という。

 甲陽学院高(兵庫県西宮市)陸上部主将だった1964年の東京五輪では、聖火リレーの随走者に選ばれた。兵庫県庁から大阪府庁までつなぐはずだったリレーは台風の接近で中止になった。

 2020年東京五輪開催が決まり、17年夏、同窓生らと「とにかく聖火の下で走りたい」と、同じように出番を失った仲間を探し始め、翌年に「56年目のファーストランの会」を結成。最大10人が一緒に走れるグループランナーに選ばれた。

 昨年5月に神戸市内を走るはずだった。だが、新型コロナの感染拡大による五輪延期で「57年目」に。そして今年も、緊急事態宣言で公道でのリレーは中止された。

 「どうなっても、喜んで走らせてもらうつもりだった」。この日は10人が交代でトーチを持ったため、森さんが手にしたのはわずか2メートル弱だった。それでも「距離は関係ない。ここに立てたことで十分」と森さん。次のランナーが持つトーチへ聖火をつなげた。岡田健