名前に「コロナウイルス」、新種の虫に命名のわけは

小堀龍之
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 東欧のコソボで水生昆虫の新種が見つかり、新型コロナウイルスにちなんだ学名がつけられた。新種であることがわかり、論文にした時期に新型コロナの世界的流行(パンデミック)が起きたからだが、研究者は学名にもう一つの意味も込めたという。

 この虫は、日本にもいるトビケラの仲間だ。幼虫はイモムシのような見た目できれいな川などの水中で過ごし、成虫はガのような形で空を飛ぶ。

 研究者がコソボの国立公園の山地で、虫取り網や手づかみなどでトビケラを採集していたとき、これまで知られている虫と特徴が異なる新種を発見した。見た目は茶色で、前羽の長さは10~11・5ミリほどだ。

 研究者が発見を発表するための論文を書いていた2020年、新型コロナのパンデミックが起きた。そのため、世界共通の学名を「Potamophylax coronavirus(コロナウイルス)」として、専門誌に発表した。

 論文によれば、この種名にはもうひとつの意味がある。研究者はコソボの水生生物にも、生息地の汚染と縮小という知られざるパンデミックのような危機が起きていることを学名は比喩として示した、と説明している。

 新種が発見された地域の生態系は近年、森林伐採や生息地の破壊、観光活動などによって脅かされている。また、多くのわき水が住宅や観光施設からの取水によって危機に陥っている。

 過去数年の間に、水力発電所での取水が増え、定められた河川の最小流量が守られず、水生生物にとって少なすぎる状態になっているケースもある。研究者は、こうした変化が「近い将来、水生生物の多様性を大きく脅かす可能性がある」と指摘している。

 論文は専門誌のサイト(http://dx.doi.org/10.3897/BDJ.9.e64486別ウインドウで開きます)で公開された。(小堀龍之)