障害児 災害時に直接福祉避難所へ 山口・宮野地区

寺島笑花
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 豪雨や地震などの大規模災害時に障害者や高齢者ら要配慮者を受け入れる「福祉避難所」について、政府は障害者らが自宅から直接避難できる仕組みを導入する。これに先駆け、山口市の宮野地区では障害がある子どもの親が自治体に働きかけ、直接福祉避難所に避難できる独自のシステムをつくった。

 福祉避難所は2021年1月時点で、県内で224カ所指定されている。だが、これまでは内閣府の「福祉避難所の確保・運営ガイドライン」に沿って、指定避難所に避難した人の中から、支援が必要な対象者を把握した上で開設されるケースが多かった。このため、移動による被災リスクや障害者らの負担の大きさが課題となっていた。

 山口市の宮野地区に住む障害がある子どもの親ら8人でつくる住民団体「親子で防災@みやの」は、2019年にできた。代表を務める福田みゆきさん(42)は重度の知的障害や自閉症などがある息子(9)の母親だ。契機は東日本大震災。被災者の手記には、自閉症の子どもが避難所で騒いでしまうため親子で車中泊を続けたこと、配給の列に並ぶことができずに必要な物資が受け取れなかったことなどが書かれていた。「ひとごとではない」と感じたという。

 このため、宮野地区社会福祉協議会に相談。あらかじめ市が福祉避難所として指定している宮野地区の障害者支援施設「ふしの学園」にかけあい、19年に直接避難できる態勢を整えた。事前登録制で、現在3人の施設利用者が登録。4人の支援者が運営を担う。

 今月13日には、市中心部の大歳地区に住む障害がある子どもの母親や市職員ら7人に、福田さんらが宮野地区の取り組みについて説明した。自閉症の小学3年の娘をもつ山本百合恵さん(34)は「災害時に一般の避難所で過ごせるのか不安」。自閉症などの障害がある2人の息子をもつ竹内佳織さん(44)は「迷惑をかけることを恐れて、災害時も自宅から動けない人がいることを分かってほしい」。参加した市職員は「理解を広げることから始めたい」と話した。

 この団体では、障害者向けの「防災ピクニック」を開いている。避難生活で使うマットレスや簡易トイレを用意したり、非常食を試食したりして、障害者が初めての場所でも強いストレスを感じることのないよう避難生活を体験してもらう活動だ。福田さんは「いざという時に大切なのは地域での助け合い。支援が必要な子がいることを地域の人にも知ってもらいたい」と話している。(寺島笑花)

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 政府は今月20日、災害対策基本法などの一部を改正した改正法を施行した。従来のガイドラインを改定し、要配慮者の個別避難計画の作成を市町村の努力義務としたほか、福祉避難所の受け入れ対象者を市町村が決め、あらかじめ住民に知らせる制度を設けた。これらにより、要配慮者が自宅から福祉避難所に直接避難できる仕組みづくりが進み、福祉避難所に一般の住民が殺到して混乱が生じることを防ぐことが期待されている。