阿炎、淡々と 出場停止から関取復帰、その間に恩人は…

小俣勇貴
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 大関照ノ富士が2場所続けて賜杯(しはい)を手にした大相撲夏場所(東京・国技館)。幕下にも、2場所連続優勝した力士がいる。元小結で、東幕下7枚目の阿炎(27)だ。昨年7月場所中の不祥事で3場所出場停止の処分を受け、春場所で復帰。そこから一度も負けず、26日の大相撲名古屋場所の番付編成会議で、再十両が決まった。

 夏場所13日目の21日、幕下優勝のインタビュー。「応援してくださる方々の声や期待に沿える力士になりたい」。以前のような明るい感じではなく、丁寧な受け答えを見せた。

 突っ張りを武器に25歳で三役昇進。期待の若手力士として注目され、発言の自由奔放さでも人気を博した。だが2019年九州場所前。悪ふざけを撮影した動画をSNSに投稿したことで相撲協会から厳重注意を受けた。協会全体で個人的なSNSの投稿が自粛となる原因となった。

 「失った信用を取り戻すのは時間がかかる」と反省したが、20年7月場所で途中休場。相撲協会新型コロナウイルス感染対策のガイドライン違反だった。夜の接待を伴う店で会食し、調査に虚偽の報告をしていたことも明らかになった。

 引退届を提出したものの、受理されなかった。自宅を部屋に移して師匠の監督下に入り、再起をめざすことになった。

 今年3月の春場所、西幕下56枚目で迎えた。初日には「土俵が広く感じた」と戸惑いも見せたが、地力は確かだった。7戦全勝。「相撲をとれる喜びを学ばせてもらった場所。精神的にも体力的にも体力を削って、全力で相撲をとれた」と語った。

 一方で、悲しい出来事もあった。かつて角界につなぎとめてくれた横綱鶴竜(現鶴竜親方)の引退だ。

 15年春場所で十両に昇進してから、伸び悩んだ。将来が見えず、解体業者に転職する手はずを整えた。その矢先の16年九州場所、同じ一門だった鶴竜の付け人にけが人が出たため、代役を担った。黙々と稽古し、謙虚で負けても腐らない横綱の姿に感化された。熱意を取り戻すと、番付は再び上がり始めた。18年初場所新入幕。横綱初挑戦の相手も、鶴竜だった。

 不祥事から復帰した場所で、土俵を去った横綱。思いを問われると、「いまの自分がコメントするのは、何というか……」とためらった。関取に復帰する阿炎は多くを語ろうとせず、淡々と土俵に上がっている。小俣勇貴