図書館の貸し出し履歴、捜査機関に提供 16年間で急増

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西村奈緒美 赤田康和
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 公共図書館が警察などの捜査機関に利用者の情報を提供していたケースが明らかになった。憲法が保障する「表現の自由」「内心の自由」を脅かす恐れがあるとして、日本図書館協会や専門家からは懸念の声があがる。

 行政のデジタル化が進み、データ活用が進む中、図書館は利用者の情報とどう向き合うべきなのか。

 北海道苫小牧(とまこまい)市の市立中央図書館。蔵書約19万冊を持ち、年に約30万人が利用する。そんな地域の拠点というべき図書館から、市民の情報がもれていた。

 2017年、ある利用者が借りていた本の書名や予約状況を北海道警苫小牧署に提供していたのだ。

 提供が発覚したのは18年10月の市議会で、担当者は「情報提供に違法性はない」と強調したが、批判が高まった。

任意捜査の「捜査関係事項照会」で

 というのは、道警の提供要請は、裁判官が出す「捜索差し押さえ令状」に基づくものではなく、任意捜査である「捜査関係事項照会」によるものだった。

 この問題を受けて、札幌弁護士会は昨年、札幌市と周辺自治体にある公立図書館と大学図書館、計102館を対象にアンケートをした。

 回答した43館のうち10館が令状なしの照会を受けており、うち苫小牧市立中央図書館を含む5館は捜査当局に情報を提供していた。

 提供したのは、貸し出し履歴や登録情報、ある図書を借りた人の情報やコピーの申し込みの有無など、多岐にわたった。

 札幌弁護士会は問題視し、令状なしの照会には応じないよう図書館に求めた。「利用者情報はプライバシーに関わる。収集するなら令状に基づくべきで、裁判所は厳格にチェックすべきだ」と斎藤耕弁護士はいう。

 利用者の秘密の保持を図書館は重視してきた。

 日本図書館協会は1979年、図書館の憲法ともいわれる「図書館の自由に関する宣言」を改定し、こう記した。「図書館は、利用者の読書事実を外部に漏らさない。ただし、憲法35条にもとづく令状を確認した場合は例外とする」

図書館の「憲法」は秘密保持を明記 でも113館が……

 だが、近年、令状なしの「照会」を受けて情報提供する事例は少なくない。

 日本図書館協会による2011年の全国調査では、192館が捜査機関から照会を受け、その6割にあたる113館が貸し出し履歴などを提供したと回答した。

 1995年の調査では、情報提供を認めた図書館が照会を受けた館の1割程度にとどまっていた。16年間で、提供に応じる割合が高まったことになる。

図書館のパソコンで企業を脅迫したケースも

 なぜ、警察は令状なしの照会という手法をとるのか。

 ある捜査関係者は「令状は手…

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