談合文化、証拠隠滅…裁判で「闇」が次々 医薬品卸談合

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田中恭太、金子和史
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四大卸による受注調整が行われた現場とみられる都内の貸会議室。裁判で検察側が明らかにした=2021年5月、田中恭太撮影(画像の一部を加工しています)
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 病院や調剤薬局に納入される医薬品。その流通は「医薬品卸会社」が大部分を担う。例えば新型コロナウイルスワクチンの配送の多くも彼らの仕事だ。そんな医療インフラを支える「四大卸」による談合事件が、公正取引委員会東京地検特捜部に摘発され、業界に衝撃が走った。長年続く談合文化や受注調整への社長関与、証拠隠滅……。4月に始まった裁判では、検察側が業界の暗部や事件の舞台裏を次々と明らかにした。

 4月27日。東京地裁8階の法廷にスーツ姿の男性4人が入り、裁判官に深々と頭を下げた。年商2兆円超を誇る医薬品卸業界3位のスズケン(本社・名古屋)の副社長や元常務執行役員ら幹部陣だ。「被告人」として法廷に立った。

 翌日には業界4位の東邦ホールディングス(HD)傘下の東邦薬品(本社・東京)から元部長や親会社の法務課長が、5月10日には1位のアルフレッサHDの子会社、アルフレッサ(同)の専務や元常務執行役員ら4人が出廷した。

 各社が問われたのは、入札談合をしたとする独占禁止法違反の罪だ。公取委が調査を進め、昨年12月に刑事告発東京地検特捜部在宅起訴していた。

 事件の舞台は、全国34都道府県で57病院を運営する独立行政法人地域医療機能推進機構」(JCHO(ジェイコー)、尾身茂理事長)による大規模な医薬品の発注だ。

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全国で57病院を運営する地域医療機能推進機構の本部=2019年11月、東京都港区

 JCHOは、旧社会保険病院などの運営母体として2014年に発足。所管する2病院以上が使う医薬品は2年に1度、まとめて入札にかけ、納入を担当する卸会社と単価を決めていた。卸業界は寡占化が進み、シェアの約8割を4大企業グループが占める。全国に納入する必要があるため、入札に参加するのは全国に流通網がある「四大卸」に限られ、1回につき総額約700億~860億円規模を受注していた。

 事件では四大卸のうち3社が、公訴時効を迎えていない16年と18年の入札で談合した罪で、起訴された。

長年談合か

 初公判。検察側は冒頭陳述の初っぱなから、業界の「談合体質」を指摘した。今回の事件よりもずっと前から、互いに協力して競争を避けてきた、という。

 「4社は、競合会社との間で受注競争を控え合い、医療機関の入札や相見積もりについては、競合他社との間で受注予定事業者や価格をあらかじめ調整して臨んだり、医療機関の値引き要請は、情報交換しながら値引きを抑える方向で対応したりしていた」

 こうした対応をしてきた各社は、03年にも、宮城県内の医薬品取引で価格カルテルを結んでいたとして、他の業者とともに公取委から課徴金納付命令を受け、問題になった。

 検察側はこの日の公判で、各社間での「部課長級会合」が遅くとも04年ごろには開かれ、幹部間で受注調整や医療機関からの値引き要請への対応の協議、「談合破り」が起きた際の後処理などが行われていた、と指摘。行政処分の直後も悪習が続いていたと説明した。

医薬品卸業界の大手各社が摘発された今回の事件。記事の後半では、起訴された各社幹部が業界の体質について触れた法廷発言のほか、裁判で明らかになった一部社による証拠隠滅の動きや、起訴を免れた社の最高幹部らの「供述調書」の内容などを報じます。

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家宅捜索を受けたスズケンの本社ビルには段ボールが次々に運び込まれた=2020年10月13日午前、名古屋市東区、小松万希子撮影

現場は貸会議室

 4社はJCHO入札でも協調…

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