五輪開幕まで2カ月弱、悩める奈良県内ホストタウン

平田瑛美、篠原大輔
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 東京五輪開幕まで2カ月、パラリンピック開幕まで3カ月を切った。新型コロナウイルス感染拡大の影響で海外勢の事前合宿や交流事業が相次いで中止になっている。奈良県内のホストタウン6市町で中止の決まったところはないが、決定したケースもない。

 事前合宿を誘致している4市は、県と共同で受け入れの準備に当たっている。荒井正吾知事は26日の定例記者会見で「自治体と相談して、受け入れが可能かどうかの決定を至急したい」と語った。

 荒井知事は国の受け入れガイドラインについて、「選手たちに陽性者が出た場合は自治体の責任で対応するとあるんですが、それができるかどうか。これが一番大事で厳しいんじゃないかと見ております」と言及した。「いまのような(感染)状況だと可能かもしれませんが、爆発的感染と重なる可能性もあります。そのようなことも考えますと、みな慎重になっておられる。医療には県の責任も出てくるので、つぶさに検討しないといけない」と語った。

 ホストタウン側は、じりじりとした毎日を過ごしている。天理市エジプト柔道チームの事前合宿に向けて準備してきた。エジプトにとっての大きなメリットは、強豪の天理大柔道部の学生たちとの稽古だ。

 市の担当者は「接触が伴う競技だけに、それができるのかどうか。明確に国から示してもらってない現状があります。たとえば相手をする学生がワクチンを打っていれば安心材料になるとは思うんですけど、一般市民をないがしろにして学生に接種というのは難しいですし」と、悩ましげに話した。今月中には何とか受け入れの可否をエジプト側に伝えたいという。フランス柔道チームのホストタウンでもあるが、事前合宿の予定はない。

 橿原市は五輪のウクライナ陸上競技チーム、パラでカザフスタン(競技未定)の事前合宿に備えている。

 ウクライナは通常なら7月中旬から橿原公苑陸上競技場で五輪本番に備える予定だ。市の担当者は「病床使用率が高くて入院待機の方も多数おられる中で、もし来日した選手に陽性者が出たらどうなるのか。保健所の体制は県の所管になるので、県がどういう判断をするのか待っている状態です」と語った。

 大和郡山市は五輪の香港競泳チーム、パラのシンガポール水泳チームの事前合宿を誘致。市内にある県営の水泳施設「スイムピア奈良」で本番に備えてもらう予定だ。市の担当者は「県を通じてこちらの状況を伝えて、来られるのかどうかを尋ねてもらっているところです」と話す。五輪開幕の1カ月前には香港からの返事がほしいと考えているが、「文化も違うし、あんまりせかすのも……。(事前合宿は)厳しいんだろうなと感じてます。日本に近いから、お国で練習されて直接東京にというのも一つの方法かなと。帰りにちょっとでも寄ってもらえたら、それはそれでありがたい」。正直な胸の内を明かした。

 オーストラリア女子サッカーチームを事前合宿に招く奈良市の担当者は「受け入れられるかどうか、何とも言えない段階です。実現した場合はもう、カンヅメですね。ホテルから一歩も出さない、競技場からも一歩も出さない。それぐらいしかできないです」。もはや選手と市民の交流は望めない現実がある。

 グアテマラのホストタウンである田原本町と昨年9月にプエルトリコのホストタウンになった川西町は、もともと大会後の両町での交流を想定していた。現在はともに大会後のオンライン交流が可能かどうか検討している。(平田瑛美、篠原大輔)

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 東京五輪に関してさまざまな情報が流れる中、出場する選手はどう感じているのだろうか。「中止になることもあるのかな、とは思っています」と話すのは男子アーチェリー代表の古川高晴さん(36)=近畿大学職員。奈良県生駒市内で週6日練習し、5大会連続の出場を決めている。

 中止の可能性を頭に入れつつ、心は平穏を保てているという。「これまでのオリンピック前よりも落ち着いてますね。いろんな報道や情報があるたびに、自分の気持ちを確かめられる。『自分のペースでしっかり練習するだけだ』って。今回はカウントダウンの日数が気にならないです」