保険料の6割増も それでも進む国保改革 その狙いは

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榊原謙、滝沢卓
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 国民の誰もが公的な医療保険に入る「国民皆保険」は1961年、国民健康保険(国保)が整備されたことで完成した。仕事を失うなど、不安定な立場の人たちの受け皿にもなってきた国保は、皆保険のまさに最後の「とりで」。しかし、半世紀を経たいま、加入者の高齢化が進み、制度の先行きが危ぶまれている。国は法改正などで改革を進めているが、加入者にも様々な影響がありそうだ。

 2024年度には、国民健康保険に入る村民1人あたりの保険料(税)は、今より5万円以上高い12万9666円に――。

 紀伊山地に位置する人口800人余の奈良県北山村の広報紙に、こんな試算が載ったのは、18年4月のことだった。自営業者や退職者らが入る国保の保険料は市町村ごとに違う。試算は村の保険料が7年で6割超も上がるという衝撃的な内容だった。昨年度までにすでに保険料を2度引き上げ、次の引き上げは22年度に迫る。なぜ、そんなに急に上げるのか。村の担当者は村民にこう説明した。

 「県で決まってしまったんや」

 下北山村の保険料はそれまで、県内でも最低水準だった。しかし、村の国保加入者は200人台で財政規模は小さく、「透析や大きな手術が重なれば、医療費はすぐに跳ね上がる」(担当者)。村民の高齢化で膨らむ医療費を、基金の取り崩しなどでしのいできたが、そろそろ限界だった。

 そんな折、「24年度の保険料の統一」という県の大方針が17年に決まった。市町村ごとに異なる保険料を、比較的高い自治体の水準でそろえて24年度に統一する。県は保険料を統一して市町村間の格差を解消し、国保財政の運営もまとめて効率化しようと考えた。県内39市町村のうち32の自治体で保険料が上がるが、将来引き上げが必要な下北山村のような自治体には渡りに船だった。県が音頭を取ってくれた方が保険料アップの説明がしやすくなる面があったという。

 全国的にも国保は加入者の4割が65~74歳で、1人あたりの医療費は企業勤めの人が入る健康保険の約2倍。いずれ保険料アップが必要な自治体は多く、奈良県荒井正吾知事は「同じ所得・世帯構成なら県内どこでも保険料が同じになる『奈良モデル』」とアピールした。それを「先進事例」として、なかなか進まない国保改革の突破口にしようとしたのが財務省だった。

 都道府県の責任で統一保険料を決めるようになれば、保険料が上昇しないように、県単位で医療の効率化が図られ、国や地方の社会保障費の伸びを抑える効果が期待できるからだ。そこで、政府は国保法改正案を今国会に提出。各都道府県に対し、国保の運営方針に保険料の統一についての考え方を書かせるなど、国保の管理を強めるよう促す。すでに14道府県が統一をめざす時期などを方針に書き込んでいる。

 ただ、改正案は統一を義務づ…

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