性同一性障害のトイレ使用制限、高裁「違法ではない」

村上友里
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 戸籍上は男性だが女性として暮らす性同一性障害の50代の経済産業省職員が、女性トイレの使用制限は差別だなどと国を訴えた訴訟の控訴審判決(北沢純一裁判長)が27日、東京高裁であった。使用を制限した同省の対応は「注意義務を尽くさなかったとは認め難い」として違法ではないと判断し、違法性を認めた一審・東京地裁判決を覆した。

 原告の職員は、健康上の理由で性別適合手術は受けていないが、2010年以降は女性の服を着用するなど女性として勤務することを同省に認められた。だが戸籍上の性別が男性との理由で、勤務フロアから2階以上離れた女性トイレを使うよう同省に求められたため15年に提訴した。

 高裁判決は「性自認に基づいた性別で社会生活を送ることは法律上保護された利益」と認めつつ、性同一性障害への同省の対応は「先進的な取り組みがしやすい民間企業とは事情が異なる」と指摘。原告が同省側に性同一性障害と告げた09年時は「各官庁で指針となる規範や参考事例はなく、(戸籍上で)性別変更をしていないトランスジェンダーへの対応は未知だった」とした。

 そのうえで、同省が使用制限を決める際に原告や原告の主治医の意見に加え、ほかの職員の意見を聴く説明会を2回開くなどしたことを「積極的に検討、調整して決めた」と評価。使用制限を続けたことは「ほかの職員が持つ性的不安なども考慮し、全職員にとって適切な職場環境をつくる責任」を果たすためだったと指摘し、使用制限の撤廃を求めた原告の請求を棄却した。

 ただ、上司が「(性別適合)手術をしないなら、もう男に戻ってはどうか」と発言したことは違法性があるとし、国の賠償責任を認めた。賠償額は一審が命じた132万円から11万円に減額となり、事実上の原告側の逆転敗訴となった。

 原告側弁護士は判決後の会見で、「マイノリティーの権利を保障する議論がたくさんあるなか、極めてひどい判決だ。憤りを感じる。人権を守るべき行政機関が取り組みづらいとの理由で人権侵害することはあってはならない」と訴え、上告する方針を示した。

 原告の職員は声を詰まらせながら、「まさに、ちゃぶ台返し。長年ホルモン療法を受けていることや、外見的に女性として見られることが多いなど個別の事情を高裁は考えてくれなかった」と説明。生まれた時の性別とは異なる性別で生きるトランスジェンダーについては、「職場で正当に扱われないことがある。自認する性で勤務できることが当たり前になってほしい」と話した。(村上友里)