「核なき世界」実現は遠く オバマ氏広島訪問から5年

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笹川翔平 聞き手・武田肇
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 原爆を投下した米国のトップとして初めて、オバマ大統領(当時)が広島を訪問してから27日で5年が経った。あの日、オバマ氏は被爆地から改めて「核兵器なき世界」の実現を約束した。しかし、地球上には今なお1万2千発以上の核兵器が存在する。核保有国や日本が果たすべき役割は何か。

家族奪った原爆とテロ 「リーダーは被爆地訪問を」

 「大きな一歩だと思った。でも、核軍縮は遅々として進んでいない」。5年前、米国側から招待され、広島市平和記念公園内でオバマ氏の演説を肉声で聴いた同市安芸区の伊東次男(つぎお)さん(86)は、無念さをにじませる。

 広島に投下された原爆で兄の宏さん(当時12)を、2001年9月の米同時多発テロで銀行員だった長男の和重さん(当時35)を亡くした。オバマ氏の訪問当日、「チャンスがあれば2人のことを話そう」と、2人の遺影をかばんに入れて参加した。言葉を交わす機会はなかったが、伝えたかった思いは今も変わらない。「何の罪もない子どもだった兄と、仕事中の息子がああして亡くなることがどれだけむごいことか。同じような犠牲者を二度と出さないために、平和を構築してほしい。2人もそれを訴えています」

 オバマ氏が献花する姿をすぐそばで見て、「核廃絶に本気になっている」と期待を持った。だからこそ、米国だけでなく、核保有国のリーダーに被爆地を訪れてほしいと願う。「原爆を直接体験した人が少なくなるなかで、一人の人間として生々しい訴えを聞けば、少しでも考えが変わるかもしれない」。自身も、地元の中学生や訪日した米国人教師に経験を語ってきた。「兄も息子も、人の憎しみの心の犠牲になったということを伝えている。国籍に関係なく思いは伝わる」と話す。

 オバマ氏の広島訪問は、今年1月の核兵器禁止条約の発効も後押ししたと考えている。しかし、米国の「核の傘」に頼る日本政府は条約の批准に慎重だ。「被爆国として一番悲しみを知る日本が、すべての国が参加するよう音頭を取るべきだ。米国に気を使ってばかりで情けない」(笹川翔平)

「訪問の意義、色あせず」 黒澤満・大阪大名誉教授

 オバマ氏は米国の現職の大統領として初訪問した広島での演説で、「わが国のような核保有国は、核兵器なき世界を追求する勇気を持たなければならない」と誓った。その後、ロシアとの対立の深まりなどで言葉通りに核軍縮を進められなかったが、その意義は今なお色あせていない。

 一つは、オバマ氏が「プラハ…

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